シネマなび

シネマなび
Vol.65 2012年5月3日
郵便配達は二度ベルを鳴らす
張込み
Vol.64 2012年4月5日
冬の小鳥
サード
Vol.63 2012年3月1日
イヴの総て
青春残酷物語
Vol.62 2012年2月2日
アジョシ
アポロ13
Vol.61 2012年1月5日
愛を乞うひと
アデルの恋の物語
Vol.60 2011年12月1日
ソラニン
サマーストーリー
Vol.59 2011年11月3日
おもいでの夏
ベニスに死す
Vol.58 2011年7月21日
チャイナ・シンドローム
生きものの記録
Vol.57 2011年6月16日
映画は映画だ
竜二
Vol.56 2011年5月19日
ニキータ
大誘拐 RAINBOW KIDS
Vol.55 2011年4月21日
瞳の奥の秘密
悪人
Vol.54 2010年12月17日
孤高のメス
Vol.53 2010年11月19日
陽暉楼
恋人たち
Vol.52 2010年10月15日
王の男
チェイサー
Vol.51 2010年9月17日
パピヨン
薔薇の名前
Vol.50 2010年8月20日
刑事ジョン・ブック 目撃者
追憶
Vol.49 2010年6月18日
幸福
クレイマー、クレイマー
Vol.48 2010年5月21日
ディア・ハンター
日本の一番長い日
Vol.47 2010年4月16日
さびしんぼう
スケアクロウ
Vol.46 2010年3月19日
竜馬暗殺
サムライ
Vol.45 2010年2月19日
幕末太陽傳
フェーム
Vol.44 2010年1月15日
人情紙風船
自転車泥棒
Vol.43 2009年12月18日
グロリア
Wの悲劇
Vol.42 2009年11月6日
天国の日々
サンダカン八番娼館・望郷
Vol.41 2009年10月16日
サンセット大通り
東京物語
Vol.40 2009年9月18日
独裁者
飢餓海峡
Vol.39 2009年8月21日
東京裁判
ある日どこかで
Vol.38 2009年7月17日
ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ
仁義なき戦い/広島死闘篇
Vol.37 2009年6月19日
ブラザー・サンシスタ・ムーン
M★A★S★Hマッシュ
Vol.36 2009年5月15日
サイコ
雨月物語
Vol.35 2009年4月17日
ライアンの娘
遠雷
Vol.34 2009年3月20日
冒険者たち
その木戸を通って
Vol.33 2009年2月20日
プライドと偏見
ホテル・ルワンダ
実録・連合赤軍 あさま山荘への道程
Vol.32 2009年1月16日
つぐない
イングリッシュ・ペイシェント
Vol.31 2008年12月5日
ハスラー
復讐するは我にあり
Vol.30 2008年11月7日
八月の狂詩曲(ラプソディー)
アラバマ物語
Vol.29 2008年9月19日
十五才 学校4
リトル・ダンサー
Vol.28 2008年8月8日
仁義の墓場
プリティ・リーグ
Vol.27 2008年7月11日
死刑台のエレベーター
家族ゲーム
Vol.26 2008年5月30日
ユージュアル・サスペクツ
影の車
Vol.25 2008年5月2日
さらば、わが愛/覇王別姫
さらば愛しのやくざ
Vol.24 2008年3月21日
旅の贈り物 0:00発
フォロー・ミー
Vol.23 2008年2月22日
若者のすべて
家族
Vol.22 2008年1月24日
ロッキー・ザ・ファイナル
ストリート・オブ・ファイアー
Vol.21 2007年12月28日
しゃべれどもしゃべれども
ゾディアック
Vol.20 2007年11月23日
太陽を盗んだ男
明日に向かって撃て!
Vol.19 2007年10月26日
Aサインデイズ
ザ・コミットメンツ
Vol.18 2007年9月28日
荒野の1ドル銀貨
それでもボクはやってない
Vol.17 2007年8月24日
エルビス・オン・ステージ
エレキの若大将
Vol.16 2007年7月27日
ドリームガールズ
シェルブールの雨傘
Vol.15 2007年6月22日
樹の海
殺しのドレス
Vol.14 2007年5月25日
情婦
事件
Vol.13 2007年4月27日
優駿
荒野の七人
Vol.12 2007年3月23日
華麗なる一族
小さな恋のメロディ
Vol.11 2007年2月23日
蒲田行進曲
終電車
Vol.10 2007年1月26日
グッドナイト&グッドラック
博士の愛した数式
Vol.9 2006年12月22日
柳生一族の陰謀
007/ロシアより愛をこめて
特別編
アルゴ
Vol.8 2006年11月24日
カッコーの巣の上で
デルス・ウザーラ
Vol.7 2006年11月3日
キャリー
旅の重さ
Vol.6 2006年9月29日
ゴッドファーザー
砂の器
Vol.5 2006年8月25日
ジョニーは戦場に行った
火垂るの墓
Vol.4 2006年7月28日
映画に愛をこめて アメリカの夜
最も危険な遊戯
Vol.3 2006年6月23日
太陽がいっぱい
潮騒
Vol.2 2006年5月26日
新幹線大爆破
殺人の追憶
Vol.1 2006年4月28日
祭りの準備
ウエスト・サイド物語

『郵便配達は二度ベルを鳴らす』

製作/1981年
監督/ボブ・ラフェルソン
原作/ジェームズ・M・ケイン
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』
脚本/デイヴィッド・マメット
出演/
ジャック・ニコルソン
ジェシカ・ラング
ジョン・コリコス
マイケル・ラーナー

かつてイタリアの巨匠ルキノ・ヴィスコンティが映画化していますが、僕の好きなのは今回紹介するボブ・ラフェルソン監督版です。
今、京都にてTVドラマの撮影準備中です。今回の作品はサスペンス仕立ての大人のメロドラマ。
『郵便配達は二度ベルを鳴らす』もそんな作品です。
夫とうまくいっていない主婦が行きずりの旅人と濃密な恋愛を繰り広げます。主演はジャック・ニコルソンとジェシカ・ラング。
どちらも名優ですが、ことにジェシカ・ラングが素晴らしいです。元々、僕の贔屓の女優さんです。彼女は『女優フランシス』でオスカーを受賞していると思います。でも僕の一番のお気に入りは、今回の作品でしょうか…。
凄まじい情念を見せてくれます。この作品ほどドキドキ感のラブシーンはあまり記憶にないほどです。
人間の怖さをしっかり描いた作品を堪能してください。

『張込み』

製作/1958年
監督/野村芳太郎
原作/松本清張
小説『張込み』
脚本/橋本忍
出演/
大木実
宮口精二
高峰秀子
田村高広

僕の大好きな野村芳太郎監督作品です。
こちらは松本清張原作のサスペンスですが、やはり大人の情愛を軸に描かれています。
野村監督の作品は以前『砂の器』を紹介しました。他にも『影の車』『ゼロの焦点』といった松本清張モノの名作があり、トータル8本の松本清張原作の作品を撮っています。
今回の『張込み』は、その最初の作品です。昭和33年、僕が生まれた年に公開されて大ヒットしています。
この作品の素晴らしさは何と言っても緻密な脚本にあります。
張り込みを続ける二人の刑事を淡々と描き、そして張り込みをされる主婦を、この刑事からだけの目線で描き切ったところに凄みを感じます。とても勇気のいることですが、これも脚本を信じての演出だと思いました。
宮口精二と大木実の刑事も良いですが、主婦を演じた高峰秀子の存在感は特筆です。メインタイトルが出るまでの10分間、延々と列車の道程が描かれますが、この意味を考えることも楽しいです。

『冬の小鳥』

製作/2009年
監督/ウニー・ルコント
脚本/ウニー・ルコント
出演/
キム・セロン
パク・ドヨン
パク・ミョンシン
ソル・ギョング

今回は韓国映画です。
強烈な作品でした。
「アジョシ」で印象的だった子役キム・セロンが主演ということで観たのですが…この作品の彼女も良かったです。
物語は孤児院の子供たちの話なのですが、キム・セロン以外の子役たちも皆、素晴らしいのです。
小さな芝居が重なるのですが、そのお芝居のリアリティがヒシヒシと伝わります。
セリフや音楽も少なく、その分、こちらにいろんなことを想像させてくれます。

監督はこの主人公と同じように韓国の孤児院で育ち、フランスの里親に引き取られて育ったウニー・ルコント。
新人監督です。
確かにフランス名ですが、きっと韓国人なのでしょう。
韓国からは次々と注目すべき監督が登場します。

『サード』

製作/1978年
監督/東陽一
原作/軒上泊
『九月の町』
脚本/寺山修司
出演/
永島敏行
吉田次昭
森下愛子
志方亜紀子

昨年暮れの原田美枝子さんの会でお会いした東陽一監督。
これまで一度も紹介していませんでした。
東監督の作品で一番好きな作品が『サード』です。
こちらは孤児院ではなく、少年院が大きな舞台になります。
主演は永島敏行、森下愛子、吉田次昭、志方亜紀子。
もちろん俳優達が演じているのですが、まるでドキュメンタリーを観ているように高校生たちが生き生きと演出されています。
最初に観たときは、どうやって演出すれば、こんな風に俳優さんたちを撮ることが出来るのだろうって衝撃を受けました。
東監督は元々、岩波映画でドキュメンタリーを撮られていた監督、なるほどと感じたものでした。
この作品の衝撃は、森下愛子や志方亜紀子という若い女優陣が惜しげもなく全裸シーンを演じていること…。
この時代の日本映画では自然にヌードシーンを女優さんたちは演じていたのに、いつの頃からか御法度みたいになってしまいました。少々残念です。

『イヴの総て』

製作/1950年
監督/ジョセフ・L・マンキーウィッツ
原作/メアリー・オル
短編小説『The Wisdom of Eve』
脚本/ジョセフ・L・マンキーウィッツ
出演/
ベティ・デイヴィス
アン・バクスター
ジョージ・サンダース
セレステ・ホルム

3月2日の夜は日本アカデミー賞の受賞式。主演女優賞に宮崎あおいさんが『ツレがうつになりまして。』でノミネートされました。作品賞や監督賞は選外ですが、僕はエスコートするために参加します。まあ、エキストラみないなものですね(笑)。今回の作品も受賞式で若い女優さんが主演女優賞を受賞するところから始まります。ジョセフ・L・マンキーウィッツ監督の名作です。主演はベティ・デイヴス、アン・バクスター。Vo.41『サンセット大通り』の時にちょっと触れました。

貫禄たっぷりの大女優に、田舎出の女優志望がお付きとして献身的に働きます。ベティ・デイヴィス扮する大女優はもう、存在感たっぷりで怖いくらいです。一方、アン・バクスターが演じる新進女優は、誰もが好意を寄せるタイプの可憐な女性。この対比が上手いので、話が進むに連れてどんどん引き込まれます。ネタバレになるので詳しくは書けません。どうぞDVDで楽しんでください。いろんな意味でゾッとするお話です。

注意深く観ると、まだ駆け出しの頃のマリリン・モンローが出演しています。こちらも探してみてください。

『青春残酷物語』

製作/1960年
監督/大島渚
脚本/大島渚
出演/
桑野みゆき
川津祐介
久我美子
浜村純

今ちょうど、日本映画監督協会の新人賞選考をやっています。15本ほどノミネートされた作品を観て、7人の選考委員で新人賞を決定します。因みに僕は第44回の新人賞を『チルソクの夏』で頂きました。
今回の『青春残酷物語』は大島渚監督が1960年の第1回目を受賞した作品です。僕の尊敬する浦山桐郎監督の『キューポラのある街』は第3回の受賞作品です。

青春期の反抗(何かに不満をぶつける)を知的(大島流)に描いた作品かも知れません。いろんな不満(怒り)を性(セックス)を題材に表現していきます。今観ると何とも古臭い印象もあるのですが、当時(50年前)の日本では先端のカッコ良さみたいな感じに捉えられたのかも知れません。もちろん僕が2歳の時の作品なので、僕自身も観たのは大学生の頃です。その時の印象はあまりピンと来なかったのも事実です。主人公が清というのが一番印象に残っていました(笑)。 大島渚監督、28歳の時の作品。
すごい才能です。
僕は28歳の時、やっとセカンド助監督になりました。

この作品、iTunesStoreでも配信されています。
何と200円で観られます。
あ、『日輪の遺産』も配信スタートです(笑)。

『アジョシ』

製作/2010年
監督/イ・ジョンボム
脚本/イ・ジョンボム
出演/
ウォンビン
キム・セロン
キム・ヒウォン
ソン・ヨンチャン

昨年観た作品で一番好きだった作品です。やっぱり韓国映画は力があります。
兎にも角にもウォンビンがカッコいい!!男優をこんなにカッコいいって思うのは、古くはアラン・ドロン、そして我らが松田優作(こちらも古い?)以来でしょうか…。
兵役に行く前がちょっとヤワな感じだったウォンビン、前作の『母なる証明』からホントに素敵な俳優さんになりました。
クローズ・アップに行けば行くほど良く見える俳優って、最近中々いませんから…。
それから、子役のキム・セロンっていう女の子。彼女の上手さも、呆れるくらいです。
カタコト言葉の可愛いだけの子役とは全然違いました。
アクション映画ですから暴力シーンも多々あります。でも、その暴力シーンが美しいのです。
何と言うか、<品>があるのです。去年、日本で大受けした、批評家までも大絶賛のバイオレンス作品がありましたが、こちらには僕はついていけませんでした。あまりにグロくて…。好きな人はそのグロさが良いのでしょうが…。
韓国では『アジョシ』は一般の観客に大ヒット作品でした。この作品を公開に踏み切った東映に敬意を表します。
日本でも大ヒットして欲しかったのですが、もう一つ突き抜けるヒットにはなりませんでした。
観客が映画を育てる…韓国人は日本人より年間3倍映画を観ます。観る目も、3倍肥えているのかも知れません。満を持して、いよいよレンタル開始です。

『アポロ13』

製作/1995年
監督/ロン・ハワード
原作/ジム・ラヴェル、ジェフリー・クルーガー
『Lost Moon』
脚本/ウィリアム・ブロイルス・Jr、アル・レイナート、ジョン・セイルズ、エリック・ロス
出演/
トム・ハンクス
ケヴィン・ベーコン
ビル・パクストン
ゲイリー・シニーズ

僕はあまり宇宙空間を舞台にした、所謂SFモノは苦手なのですが、この作品は大好きです。
監督はロン・ハワード。劇場で30回以上観て、大好きな『アメリカン・グラフィティ』の主役を演じた俳優さんでもあります。
今はもう50代後半のハゲ頭のおじさんです…(笑)。
『ビューティフル・マインド』ではアカデミー監督賞を受賞してますが、僕は彼の作品ではこの作品が一番好きです。
15年以上前の作品ですが、CGもよく出来ています。何よりも、物語の結果が分かって観ているのですが、感動できるのがいい。
それはアポロ13に人間が乗っているからだと思います。人と人の物語だからです。何とか助かって欲しい、帰還して欲しいと、地球にいる側の一員になって観ることが出来ました。主演のトム・ハンクスほか、重厚なキャスト陣。中でもフライト・ディレクターを演じたエド・ハリスが、僕は印象的でした。
もう一つ好きなSF作品。イーストウッド監督の『スペースカウボーイ』もお勧めです。
今月と来月、日本では次々に<はやぶさ>映画が公開になります。昨年も1本公開されました。
結果も分かっていて、さらに宇宙空間には人間が存在しません。
これを感動さすには、いかに<はやぶさ>に人格を持たすことが出来るのか…。
2本の<はやぶさ>映画、楽しみです。

『愛を乞うひと』

製作/1998年
監督/平山秀幸
原作/下田治美
小説『愛を乞うひと』
脚本/鄭義信
出演/
原田美枝子
野波麻帆
中井貴一
小井沼愛

暮れに原田美枝子さんのパーティに出席して、久しぶりにお会いしました。
いつお会いしても凛として素敵な女優さんです。原田さんのいろんな作品を思い出しながら、デビュー作の『恋は緑の風の中』か『大地の子守歌』を紹介しようと思ったのですが、残念ながら両作品ともにDVDが出ていません。それではと、同じパーティに参加されていた平山秀幸監督のこの作品にしました。

この年のたくさんの映画賞をさらった作品です。日本アカデミー賞では、8部門で最優秀賞でした。ただ、僕の最初の印象はあまりよくありませんでした。公開当時、僕の娘は5才。この作品の中で我が娘を虐待するシーンがあまりに強烈で気持ち悪くなったからです。母娘の情愛を描くのに、これほどまでに暴力描写が必要なのかと…。観直してみても、この強烈な描写には…やはり?です。しかし、原田美枝子さんのお芝居の強さには圧倒されます。先日出版された「映画に生きて生かされて」の中でも、この作品に触れていますが、なるほど…そこまでやれば、こんな芝居をやれるのかと…。ラスト近くのバスの中の1カットのために、平山監督はこの作品を撮ったのでは…と思わされるくらいの名シーンです。

僕は「半落ち」でたった3日間ばかりお付き合いしただけでも、原田美枝子さんの作品に対する想いに触れ、感激しました。いつか、この作品のようにがっぷりとお仕事をしてみたいです。

『アデルの恋の物語』

製作/1975年
監督/フランソワ・トリュフォー
原作/フランセス・V・ギール
『アデル・ユーゴーの日記(Journal of Adele Hugo)』
脚本/ジャン・グリュオー、フランソワ・トリュフォー、シュザンヌ・シフマン
出演/
イザベル・アジャーニ
ブルース・ロビンソン
シルヴィア・マリオット
ジョゼフ・ブラッチリー

原田美枝子さんとちょっと重なる女優ということで、僕のイメージはイザベル・アジャーニ。フランスのトップ女優ですね。背筋がピーンとしていて、強さを感じさせてくれます。ジャンヌ・モローにも繋がりそうです。この作品で仏・アカデミー賞とも言えるセザール賞の主演女優賞を受賞しています。これ以降、合わせて主演女優賞を4回受賞しているそうです。この作品では、米・アカデミー賞の主演女優賞にもノミネートされました。監督は大好きなフランソワ・トリュフォー監督。シネマなびでは3回目の登場です。

「レ・ミゼラブル」などで知られるヴィクトル・ユーゴーの娘・アデルの一途な恋を描いた作品です。一途の恋というよりは狂気の情愛といった感じでしょうか…。初恋の軍人を執拗に追い続ける様はまさに狂人です。ほぼデビュー作に近い頃の演技ですが…やはり圧倒されます。

この作品の大きなテーマは<手紙>です。両親にお金を無心するために書き続ける手紙。父親はフランスでは誰もが尊敬する大作家です。この父娘のやり取りがずっと手紙(文字)だというのが良いのです。トリュフォー作品には手紙がいつも上手く使われています。日本では倉本聰さんの脚本などもそいうです。
僕が「チルソクの夏」や「カーテンコール」「出口のない海」で手紙を使うのは、そんな所に影響されているのかも知れません。

『ソラニン』

製作/2010年
監督/三木孝浩
原作/浅野いにお
コミック『ソラニン』
脚本/高橋泉
出演/
宮崎あおい
高良健吾
桐谷健太
近藤洋一

先週末、宮崎あおいちゃんと台湾に行ってきました。
『ツレがうつになりまして。』の台湾キャンペーンを兼ねて、台北金馬映画祭にも参加してきました。アンディ・ラウを始めとしたきらびやかな俳優陣、侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督とも会うことが出来、とても楽しかったです。
さて、今回の『ソラニン』。宮崎あおいちゃんの主演映画です。
僕はこれまで、あおいちゃんの主演作では『初恋』が好きだったのですが、この映画を観て一番好きな作品はこれかも…です(もちろん『ツレうつ』は除く)。
特に前半の男の子との同棲生活を淡々と描いたところ。どこにも居がちな2人の若者の日常がリアリティがあって、切なくなります。あおいちゃんの相手役の高良健吾さんという俳優との噛み合わせも素敵でした。
ずっと2人の様を見ていたかったのですが、途中に主人公の一人が欠けてしまってから、作品自体もちょっと失速します。それでも自転車のシーンなど瑞々しさもいっぱいでした。
あおいちゃんに自身に聞いたのですが、相当にギターの練習もしたらしく、その頑張りは、しっかりと感じることが出来ました。
編集やリズムがちょっと自主映画のようなぎこちなさも、若々しさと言えば、愛嬌にもなります。宮崎あおいを堪能してください。

『サマーストーリー』

製作/1988年
監督/ピアス・ハガード
原作/ジョン・ゴールズワージー
短編小説『林檎の樹』
脚本/ペネロープ・モーティマー
出演/
ジェームズ・ウィルビー
イモジェン・スタッブス
ケン・コリー
ソフィー・ウォード

助監督として一番忙しく仕事をしていた頃に公開された作品です。映画館にもほとんど行けずに観落としていた作品。最近になって友人に紹介してもらいました。観て良かった…。前回の『おもいでの夏』のテイストの作品ですが、甘酸っぱさよりは厳しさの映画です。
20世紀初頭のイギリスが舞台です。二人の若者が田舎を旅します。そこでひとりの少女とのひと夏の恋。よくありがちなストーリーです。駆け落ちを試みる二人ですが、行き違いのすれ違いで別れ別れに…。そして20年後の形を変えての意外な再会。ホントによくありがちなストーリーの作品ですが、人間の持っているエゴや嫉妬、優しさ、いろんな感情を丁寧に紡いでくれます。
男目線の勝手な作品…と、女性は観てしまうかも知れません。おそらくそういう風にご覧になる人のほうが多いかも…です。でも、そういう身勝手な行動も人らしい気がします。
あまり日本では有名でない俳優たちの出演作ですが、それぞれの俳優たちも皆素晴らしいです。個人的には70年代に良く観ていたスザンナ・ヨークに再会出来たことが嬉しかったです。
それから音楽。F・トリュフォー作品でお馴染みのジョルジュ・ドルリューというのも嬉しいです。

『おもいでの夏』

製作/1971年
監督/ロバート・マリガン
原作/ハーマン・ローチャー
回顧録『The Summer of '42』
脚本/ハーマン・ローチャー
出演/
ジェニファー・オニール
ゲイリー・グライムス
ジェリー・ハウザー
オリヴァー・コナント

今年の夏はずっとキャンペーンの夏でした。7月半ばに『日輪の遺産』のプロモーションが広島からスタートしました。札幌から北陸、近畿、九州まで10箇所以上、
おそらく100媒体以上の取材を受けました。9月に入ってからは『ツレがうつになりまして。』で同じことを…。

僕の今年の<おもいでの夏>はキャンペーン一色でした。でも新しい一期一会もあって、楽しいおもいでの夏になりました。 さて、こちらの『おもいでの夏』。僕の好きなロバート・マリガン監督作品です。
太平洋戦争が始まったばかりの頃、15歳の少年と年上の人妻との淡い恋物語です。
僕は中学生の時に観ました。ヒロインのジェニファー・オニールが美しくて…何だかひどく憧れました。彼女の美しさとシチュエーションに…です。

ミッシェル・ルグランのテーマ曲も素晴らしく、今聴いても甘酸っぱい想いが溢れます。いつかここで紹介した『ある日どこかで』に通じる作品かも知れません。

ジェニファー・オニール…もう63歳か。もうずっと観ていないけど、今はどうしているんだろう。

『ベニスに死す』

製作/1971年
監督/ルキノ・ヴィスコンティ
原作/トーマス・マン
『ヴェニスに死す』
脚本/ルキノ・ヴィスコンティ、ニコラ・バダルッコ
出演/
ダーク・ボガード
ビヨルン・アンデルセン
シルヴァーナ・マンガーノ
ロモロ・ヴァッリ

毎日、連日で三谷幸喜監督の新作をTV各局が競うように宣伝しています。某8チャンネルは三谷幸喜チャンネルみたいです。この監督さんは地方を駆けずり廻っての宣伝活動なんてしたことないんだろう…って、羨ましくもあります(笑)。

今月はもう1本も外国映画です。
ルキノ・ヴィスコンティ監督の『ベニスに死す』。なぜこの作品にしたかと言うと、『ツレがうつになりまして。』のオープニングをマーラーの第5番を使ってるからです。マーラーの第5番は『ベニスに死す』で使用されたことが切っ掛けになり、そこから世界的にマーラー・ブームが起きたとされています。僕もこの作品でマーラーを知りました。だからと言って、『ツレうつ』のマーラーが深い意味があるわけではないのです。ツレの趣味がクラシックなので、だったらいっそ、ヴィスコンティに挑戦しようと思っただけです。

『ベニスに死す』は老作曲家が若い美少年に恋する話です。ホモセクシャルな題材と言えます。しかし、この作品の音楽はもとより、美術や衣裳も目を見張るものがあります。これはヴィスコンティの貴族的な素養によることが大なのでしょう。

ダーク・ボガードの繊細なお芝居も堪能してください。

『チャイナ・シンドローム』

製作/1979年
監督/ジェームズ・ブリッジス
脚本/マイク・グレイ、T・S・クック、ジェームズ・ブリッジス
出演/
ジェーン・フォンダ
ジャック・レモン
マイケル・ダグラス
スコット・ブラディ

福島の原発問題、まったく解決に繋がらない国の指導者たちのオロオロ振り。30年以上も前にハリウッドの大スター達がこんな映画を作っていました。

あのマイケル・ダグラスはプロデューサーも兼ねています。
そして主演は僕の大好きなジェーン・フォンダ。どちらかと言えばヨーロッパの女優さんが好きなのですが、アメリカの女優さんでは断然この人が好きです。

ジェーン・フォンダはいろんな政治の問題に取り組んできた女優さんです。もちろん反原発の運動にも…。もう一人の主演 俳優ジャック・レモンも反原発に賛同して、この作品に取り組んでいます。
原発事故を告発しようとするTVクルーが中心のお話ですが、原発の問題だけでなく、TVというメディアの怖さの側面も描いています。
ホントによく出来た脚本を厳しい視線で描いています。
ドキュメンタリーの雰囲気を生かすために甘くなりがちな音楽を排除していることも素晴らしいです。
この作品を観て、今の国会中継を見ていると複雑な心境になります。
いつも僕は<何のために>作品を撮るか…を考えていますが、この作品はまさにハリウッドの大スター達がその想いを見せてくれた作品です。ラストのジェーン・フォンダには感動させられます!

『生きものの記録』

製作/1955年
監督/黒澤明
脚本/橋本忍、小国英雄、黒澤明
出演/
三船敏郎
志村喬
千秋実
清水将夫

黒澤明作品です。黒澤作品としては興行的に失敗した作品です。
しかし、描こうとしたことは相当に時代を意識した、そしてセンセーショナルな事柄でした。
主人公の老人(三船敏郎)は原水爆弾とその放射能に対して被害妄想に落ち入り、南米ブラジルに家族全員で移住しようとします。そこから家族の物語が始まるのですが、家族たちは経済的にも成功しているのに…と反対です。
結局、老人は精神病院に収容されるところまでいってしまうのですが、作品の暗示していることは、このタイトルにあるのではないでしょうか。
例えば、ネズミは地震を察知すると奇妙な行動を起こして、大群で移動を始めると言います。また他の動物でもそんな話を聞いたことがあります。
この主人公は、周りの人から見ると特異な行動を起こすわけですが、原水爆の脅威を本能的に感じたので、少しでも安全な場所に逃げようと行動を起こしたと見るとどうでしょう…。

黒澤明監督は人間の本能みたいなものを原水爆=核を問題に取り上げて、描こうとしたのではないかと思うのです。これは実に55年前の作品です。だから、黒澤明は凄いのだと思うのです!

『映画は映画だ』

製作/2008年
監督/チャン・フン
原案/キム・ギドク
脚本/キム・ギドク、チャン・フン、オク・チンゴン、オ・セヨン
出演/
ソ・ジソブ
カン・ジファン
ホン・スヒョン
コ・チャンソク

4月、大分・別府の映画祭でお会いしたチャン・フン監督のデビュー作。
チャン・フン監督は、あのキム・ギドク監督の助監督を務め、この作品でデビューしました。
キム・ギドクが製作・原案も兼ねています。つまりは、お弟子さんになるわけですね。

映画俳優に憧れたヤクザと、ヤクザに憧憬の気持ちを持つ映画スターのちょっぴりおかしな<友情>の物語。
でもその表現方法はどぎつい暴力…女性にはちょっと厳しい描写も多々あります。昨年紹介した「チェイサー」。
そして、「息もできない」や「悪魔を見た」など、韓国映画の暴力描写は強烈です。「チェイサー」の時にも書きましたが、この作品に暴力は必然なんです。
その答えはラスト近くでの延々と続く主役二人の殴り合い…。ここに行き着くまでのドラマは見応えたっぷりです。

ただ、ホントのラストに用意された<暴力>は果たして必要なのか…。
ここはキム・ギドクらしい感じの表現なのですが、僕はどうなんだろう…という疑問符でした。
いずれにしても、この作品がデビュー作のチャン・フン監督。素晴らしい才能だと思います。
僕は<芸術監督>キム・ギドクよりも彼のタッチのほうが好きです。…日本の監督でなくて良かった(笑)。
彼の新作『義兄弟 SECRET REUNION』まだ未見ですが楽しみ!

『竜二』

製作/1983年
監督/川島透
脚本/鈴木明夫(金子正次)
出演/
金子正次
永島暎子
北公次
佐藤金造

「花の都に憧れて 飛んできました一羽鳥 縮緬(ちりめん)三尺ぱらりと 散って 花の都は大東京です…。ヤクザもんは永遠に不滅です」

このエンディング・ナレーションが強烈な印象の作品。暴力シーンのないヤクザ映画です。
主演の金子正次は自分で借金して、自分が主演をして、この作品を作り上げました。
所謂、自主映画です。撮影や録音もあまり上手くありません。
脚本だって決して上手いホンではありません。
ただただ、主演の金子正次の存在感、そしてヒロイン・永島瑛子の存在感。

さらにこの作品を印象強いものにしたのは、金子正次が劇場公開に漕ぎ付け、公開した1週間後にガンで他界したことでしょう。彼の生きざまと、この映画の主人公・竜二がシンクロしてしまいました。

彼の生涯をルポした『ちりめん三尺 ぱらりと散って』(生江有二著)は、僕の書棚の一番端に今も置いてあります。この本に書かれている、彼の言葉「今にみてろよ!」が助監督時代の自分の応援でした。

最近、若い映画作家志望の人や、映画学校の学生たちに勧めている映画ですが、見ている人が少ないのに驚きます。
今年の冬だったか、俳優・中村獅童さんがNHK-BSで、金子正次を語り、『竜二』を語り、お墓参りに行くという番組をやっていました。獅童クンらしくて、ちょっぴり嬉しかったです。

『ニキータ』

製作/1990年
監督/リュック・ベッソン
脚本/リュック・ベッソン
出演/
アンヌ・パリロー
ジャン=ユーグ・アングラード
チェッキー・カリョ
ジャンヌ・モロー

もう20年前の作品になるんですね。リュック・ベッソン監督が日本で認知された作品です。
オープンニングの映像(音楽も含めて)からスタイリッシュでカッコよかったです。
僕は主演のアンヌ・パリローの密かにファンでした。この作品よりさらに10年前にアラン・ドロン主演の『危険なささやき』というサスペンス映画に出演していて、当時は20歳くらいだったのでしょうか…その可憐さにすっかり魅了されていました。
その後、姿を見ることはなかったのですが、この作品で10年ぶりに観ることが出来たわけです。
このヒロインは殺し屋という設定…アクションシーンも吹き替えなしで挑んでいます。
切ない恋愛劇も含めて、難しい役どころを見事に演じ切っています。
リュック・ベッソンという監督の才能にも驚かされました。前作『グラン・ブルー』で確実に映画ファンを掴んでいましたが、この『ニキータ』で確実なものにしたのではないでしょうか。さらのこの後の『レオン』で一流監督の仲間入りを果たしました。
この作品でもう一人忘れてならないのが僕の大好きなジャンヌ・モロー。
すっかりお婆さんですが、素敵です。エリック・セラの音楽も効果的でした。
アメリカで『アサシン』というタイトルでリメイクされました。こちらはブリジット・フォンダが主演ですが、クオリティは比較出来るほどのものではありませんでした。

『大誘拐 RAINBOW KIDS』

製作/1991年
監督/岡本喜八
原作/天藤真
『大誘拐』
脚本/岡本喜八
出演/
北林谷栄
緒形拳
風間トオル
内田勝康

同じ年(1991)、一番好きだった邦画がこの作品です。
岡本喜八監督は当時67歳。主演の北林谷栄さんは何と80歳でした。
北林谷栄さんは日本アカデミー賞の最優秀主演女優賞を史上最高齢で受賞しました。
僕個人的には最優秀作品賞もこの作品だと思ったのすが…。とにかく、パワフルで楽しい作品でした。
誘拐という犯罪を素材にした作品ですが、映画の中で<悪人>を感じさせる登場人物は一人もいません。
この誘拐劇通して、犯人の若者たちは人として成長していくのです。
先月書いた『悪人』も形は誘拐劇です。こちらは登場人物のほとんどが、どこか<悪人>でした。
同じようにアカデミー賞の俳優部門を独占受賞しましたが、僕は断然、<悪人>の登場しないほうが好みです。
岡本喜八監督は黒ずくめの服に、サングラス…ダンディでちょっと怖い印象がありますが、作品にはいつもウイットに富んだユーモアと斜め見するような洒落っ気がありました。
明治大学の大先輩でもあります。『四日間の奇蹟』では喜八プロからの出資もいただき、素敵なスタッフジャンパーを提供してもらいました。一度、助監督時代に付いてみたかった監督の一人でした。

『瞳の奥の秘密』

製作/2009年
監督/フアン・ホセ・カンパネラ
原作/エドゥアルド・サチェリ
『The Secret in Their Eyes』
脚本/エドゥアルド・サチェリ、フアン・ホセ・カンパネラ
出演/
リカルド・ダリン
ソレダ・ビジャミル
パブロ・ラゴ
ハビエル・ゴンディーノ

今年に入って初めての<シネマなび>。
年明けからずっと『ツレがうつになりまして。』に掛かりっきりで忙しく、すみませんでした。今月からまた頑張ろうと思います。
さて、今回の『瞳の奥の秘密』。僕はまったく知らない作品でした。
友人が紹介してくれて観たのですが、驚きました。あまり馴染みのないアルゼンチン映画、まして俳優さんも知らない人ばかりです。でもそのクオリティは凄い!の一言です。

まずは脚本が素晴らしい。殺人事件のミステリーと大人の恋愛が二重構造で進行します。上手く構成されていて、どちらも飽きずに見せてくれます。そして何より俳優陣。特に主演の男優さんが素晴らしいです。小さなアクションを丁寧に重ねて、ハッと思わせてくれたり、…ホントのプロを感じさせます。脇役の俳優たちも素晴らしいです。主演の男優さんの相棒役の俳優さんが目に付きました。

メイキャップ・美術…等々、どれを取り上げてもプロの仕事です。米アカデミー外国語映画賞を受賞しただけはある作品でした。ミステリーが主軸なので内容に触れられませんが、中盤あたりのサッカー場の5分間のシーンを観るだけでも一見の価値ありです。
一つだけ勿体ないと思うのは回想の挿入のやり方…ホントに惜しいです。

『悪人』

製作/1983年
監督/李相日
原作/吉田修一
『悪人』
脚本/吉田修一、李相日
出演/
妻夫木聡
深津絵里
岡田将生
満島ひかり

日本映画も新しい作品を…数々の映画賞を受賞した作品なので、すでにご覧になった方も多いかと…。
『ロッキー・ザ・ファイナル』の時に書きましたが、<感心>させられる映画と<感動>させられる映画。

今回の『悪人』、僕には<感心>させられる映画でした。映像の切り取り方、音楽の入り方、時系列を前後させながらの意味深な展開…ホントに上手いなぁって思いながらの鑑賞でした。そして、妻夫木さんを筆頭に俳優陣のお芝居も力がありました。しかし僕は、登場人物の誰にも共感出来ないままの2時間20分でした。誰もがネガティブ過ぎて…。
それから観たいと思う箇所が飛ばされていくのです。例えば、最初の駅での出会い…どうして車に乗れるんだろう。ここの過程が、僕はドラマだと思うのですが、撮る人によって観たい(観せたい)ポイントが違うんですね。だから面白いのです。
灯台がポイントです。灯台の光は陸には向かわないはずなのに、陸に向けても光っている。この狙いは何だろうと思いながら…僕には分かりませんでした。『四日間の奇蹟』の灯台の光は、最後に<奇蹟>の象徴として陸に光を向けたのですが…。僕が唯一共感出来た登場人物はバスの運転手さんでした。
僕の昨年一番<感動>した日本映画は、やはり『孤高のメス』です。いろんな映画があるから、映画なんです。そして、いろんな見方があります。

『孤高のメス』

製作/2010年
監督/成島出
原作/大鐘稔彦
『孤高のメス』
脚本/加藤正人
出演/
堤真一
夏川結衣
吉沢悠
中越典子

いろんな映画賞レースが始まったようですね。僕の今年の一押し作品がこの作品でした。
ポスターや宣伝からは、何となく田宮二郎さん演じた「白い巨塔」ぽい作品を想像していたのですが、もっとヒューマンで温かいドラマでした。
主演の堤真一さんは「三丁目の夕日」などでも、ちょっとオーバーアクトで、僕はどちらかと言えば苦手な俳優さんでした。ところがこの作品ではきわめて押さえたお芝居をしています。その控えめなお芝居が心に届きます。
何と言っても良かったのは夏川結衣さんでした。この看護師さんの心の揺れがこの作品のすべてかも知れません。
医師を尊敬の眼差しで見つめながら、ちょっとした恋愛の感情を表現しています。ラスト近くのタクシーのシーンが唯一のラブシーン。大人のラブシーンです。この人が主演女優賞を貰えないのが残念です。
エンディングのおしゃれな演出も忘れられません。思わず、上手いと唸りました。

敵対する医師たちのデフォルメされたお芝居だけが残念でした。

外国映画のほうは残念ながら思い浮かびません。
この暮れはちょっと忙しく…。
韓国映画『息もできない』が気になった作品ですが、未見です。
今回は日本映画1本ということで…すみません。

『陽暉楼』

製作/1983年
監督/五社英雄
原作/宮尾登美子
『陽暉楼』
脚本/高田宏治
出演/
緒形拳
池上季実子
浅野温子
二宮さよ子

五社英雄監督が精力的に映画を撮っていた頃の一作です。
一番ポピュラーなのは<なめたらいかんぜよ!>の『鬼龍院花子の生涯』でしょうか…。
でも僕がなんだか好きなのは、この『陽暉楼』です。
まずはオープニングシーンの格好良さ…陽暉楼の廊下を芸妓たちがしゃなりしゃなりと歩くのですが、その壮観なこと。一気に映画の世界に入り込めます。そこに流れる巨匠・佐藤勝の音楽も最高潮です。
緒形拳さん演じる女衒とその周りの芸妓(女優)たちの愛憎劇が絢爛豪華に繰り広げられます。
演じる俳優陣はオーバーアクションのあざといお芝居ですが、そのデフォルメされた芝居がこういう今とは現実離れしたある種の夢物語には似合います。池上季実子さんと浅野温子さんの決闘シーンは圧巻でした。
今撮影中のTVドラマ「看取りの医者」に二宮さよ子さんが出演してくだいました。
この『陽暉楼』にも出演されています。この作品のあと『吉原炎上』では、存在感抜群のお芝居でした。
映画学校の頃に観た作品ですが、そんな大女優さんに<よーい、スタート!>を掛けられることに改めて喜びを感じます。

『恋人たち』

製作/1958年
監督/ルイ・マル
原作/イヴァン・ドノン
短篇小説『明日はない』
脚本/ルイ・マル、ルイ・ド・ヴィルモラン
出演/
ジャンヌ・モロー
ジャン・マルク・ボリー
アラン・キュニー
ホセ・ルイ・ド・ビラロンガ

フランスのヌーヴェル・バーグを代表する監督の作品ですね。
以前、『死刑台のエレベーター』を紹介しましたが、今回も同じルイ・マル監督作品です。
ブルジョアの夫人が夫に不満を持ち、年下の青年とちょっとした不倫に陥るという単純なストーリーなのですが、15〜6分続く、夜の庭でのラブシーンが秀逸です。
主演は『死刑台のエレベーター』と同じくジャンヌ・モローですが、本当に美しい…セリフのほとんどなく、官能的です。
いつかこんなラブシーンを撮ってみたいと思います。すごく勇気のいる演出です。
この作品も白黒作品ですが、それだけに夜のシーンが効果的なのかも知れません。撮影監督は前作に続いて、名手アンリ・ドカエ(太陽がいっぱい)です。
前作の『死刑台のエレベーター』ではジャズのマイルス・デイビスの即興演奏で音楽を表現したのですが、この作品ではブラームスの交響曲3番が効果的に使われています。ルイ・マルはこの時26歳ですが、ホントに博学なんだと感じさせます。

撮影中の「看取りの医者」もブラームスが象徴的に使われています。こちらは脚本の篠原高志さんが上手に引っ張り出してくれました。

『王の男』

製作/2006年
監督/イ・ジュンイク
原作/キム・テウン
演劇『爾』
脚本/チェ・ソクファン
出演/
カム・ウソン
イ・ジュンギ
チョン・ジニョン
カン・ソンヨン

<日韓海峡圏映画祭>の審査と映画祭に参加したことで、先月からすっかり韓国付いてしまいました。
第2回で『殺人の追憶』を紹介した以外、あまり韓国作品を取り上げていないので、今回は韓国作品を…。
2人の大道芸人のお話です。
友情でもあり、同性愛的な関係にも見える主人公。
以前にここで紹介した中国映画『さらば、わが愛・覇王別姫』を思せます。
でも、この作品ほどの堅苦しいまでの格調高さはありません。
貧困の芸人達の生き様を大らかに、そしてちょっぴり滑稽に描き出します。
個人的には中性的な芸人を演じた、イ・ジュンギという俳優さんが良かったです。
日本で言えば、早乙女太一さんといった所でしょうか(笑)。
身のこなし、そして表情の芝居…ほかの韓国の俳優さんが大きな芝居をする分、余計に彼の柔らかい芝居に目が向きました。
何気なくDVDを借りて来て観たのですが、こんなに上質な作品にあたる所が韓国映画の素晴らしさ。
映画人口(映画観客数)は、韓国は1年間に一人が3.2本くらい観るそうです。
日本は一人が1.2本くらいです。つまり韓国人は日本人に比べて3倍近く映画を劇場で観る訳です。
映画を観る目も育ち、肥える訳です。
つまり映画観客が上質な映画を育てるのです。
ヒットする映画の質も、やはり韓国映画の質のほうが遙かに高いと、僕は思います。

『チェイサー』

製作/2008年
監督/ナ・ホンジン
脚本/ナ・ホンジン
出演/
キム・ユンソク
ハ・ジョンウ
ソ・ヨンヒ
キム・ユジョン

もう一つ、韓国映画を…
一昨年、僕が初めて宣伝のためにコメント※1を書いた作品です。
いつもはそう言ったオファーをお断りするのですが、この作品はとにかく力強くて、一人でも多くの人に劇場で観て欲しいと思いました。
猟奇殺人が扱われていて『殺人の追憶』に比べられたりもしますが、この作品の凄みは、違うところにあるように思います。
息詰まるように畳みかけてくる仕掛けが上手いのですが、とにかく感じさせるのは、追う側も追われる側も共に痛みなのです。
それも心の底からの痛み…そしてその痛みは強烈な暴力描写としても、描いて見せます。
圧倒されます。
ラストまで、その痛みを徹底的に映し出す強引さに、僕は敬意を表しました。
俳優陣も見事です(つまり演出が素晴らしい!)。
追う男を演じたキム・ユンソク、追われる男のハ・ジョンウ、そして被害者の女のソ・ヨンミ。
観客のクオリティも高いけど、俳優達の質も高いです。
恐るべし、韓国映画。
負けないように頑張ろうと思います。
コメント※1
【残虐なシーンが必然の作品だ。ズルしていない凄みがヒシヒシと伝わってくる。素晴らしい新人監督の登場に乾杯!】

『パピヨン』

製作/1973年
監督/フランクリン・J・シャフナー
原案/アンリ・シャリエール
『パピヨン』
脚本/ダルトン・トランボ、ロレンツォ・センプル・Jr
出演/
スティーヴ・マックィーン
ダスティン・ホフマン
ヴィクター・ジョリイ
ドン・ゴードン

今月も先月に引き続き<午前十時の映画祭>の上映作品から選びました。

まず1本目は『パピヨン』です。
主演はスティーブ・マックィーンとダスティン・ホフマン。

調べてみるとこの50本に主演作が3本入っている俳優は今回のこの二人。
『パピヨン』がWっています。
あとは前回紹介したロバート・レッドフォードだけです。
特にマックィーンは1980年に50歳で亡くなっているのですから凄いです。

さて、この作品。今ではよくある脱獄ものです。
終身刑で島送りになったマックィーンが島から逃亡するまでのストーリー。
島での同僚がホフマンです。
この二人の奇妙な友情が大きなテーマなんですが、この作品では、助演となったホフマンの演技が素晴らしいです。

マックィーン得意のアクション・シーンがあまり無いので、微妙な人間の芝居はホフマンが一歩リードといった所でしょうか…
ラスト近くの老け芝居は絶妙です。

来月にS・マックィーンの没後30年の特別版(DVD)が発売予定みたいです。
僕も買おうかな…

『薔薇の名前』

製作/1986年
監督/ジャン=ジャック・アノー
原作/ウンベルト・エーコ
『Le Nom de la Rose』
脚本/ジェラール・ブラッシュ、ハワード・フランクリン、アンドリュー・バーキン、アラン・ゴダール
出演/
ショーン・コネリー
F・マーリー・エイブラハム
クリスチャン・スレーター
エリヤ・バスキン
 

タイトルのイメージに比べると陰湿で寒々しい作品です。

14世紀のヨーロッパでの宗教を素材としたサスペンス映画です。
主演はショーン・コネリー。
この作品あたりからジェームズ・ボンドを脱却して渋い演技派に転身したのではないでしょうか。
そして、その助手役がクリスチャン・スレーター、ほぼこの作品がデビュー作です。

僕は彼の出演作では他に『インタビュー・ウイズ・バンパイア』が好きです。

14世紀の修道院の美術が素晴らしいです。
こういう作品はアメリカでは無理です。
ヨーロッパの奥深さを感じます。

監督のジャン・ジャック・アノーはフランスの監督ですが、いつも美術には拘ります。
『愛人/ラマン』や『セブン・イヤーズ・イン・チベット』でも素晴らしい美術を見せてくれました。

やや冗長なストーリーに男達ばかりの話でちょっと間延びするかも知れませんが謎解きも含めて一級品のサスペンスです。

『刑事ジョン・ブック 目撃者』

製作/1985年
監督/ピーター・ウィアー
原案/ウィリアム・ケリー、アール・W・ウォレス、パメラ・ウォレス
『Witness』
脚本/アール・W・ウォレス、ウィリアム・ケリー
出演/
ハリソン・フォード
ケリー・マクギリス
ルーカス・ハース
ダニー・グローヴァー

今回は50回目のシネマなび。スタートしたときはこんなに続けるとは思いもしませんでした。
お付き合いくださり、ありがとうございます。
さて、記念の50回目は今年の3月からスタートして全国のTOHOシネマズで上映が続いている<午前十時の映画祭>から…。
ハリソン・フォードは『スターウォーズ』『レイダース』のシリーズで大スターになった俳優ですが、僕の一押しはこの作品です。
この作品はサスペンスのお手本のような作品。
映画の冒頭で少年が目撃者になってしまうのですが、そのシーンが卓抜です。

セリフがなく、音楽と細かなカットのモンタージュでジリジリとサスペンスを作ります。
その少年の目線で目撃した人物をH・フォードが知るシーンもやはりセリフがなくて、モンタージュだけ…。このシーンだけでも見応えありです。
その<目撃>という行為を本筋に、少年の母親とH・フォードの淡い恋心もうまく表現されて…。
上映でご覧いただきたいけど、DVDでも是非。

『追憶』

製作/1973年
監督/シドニー・ポラック
原作/アーサー・ローレンツ
『The Way We Were』
脚本/アーサー・ローレンツ
出演/
バーブラ・ストライサンド
ロバート・レッドフォード
ブラッドフォード・ディルマン
ロイス・チャイルズ

<午前十時の映画祭>にここで紹介した『ある日どこかで』や『フォロー・ミー』といった小さな作品が入っていたのが嬉しかったのですが、この作品もどちらかと言えばそんな作品。
ロバート・レッドフォード、バーブラ・ストライサンドというビッグスターが主演なのですが…。
男女二人の恋愛を長い年月に渡って描いています。
最初は恋愛映画のテイストなのですが、途中からは大人の男女の機微を、アメリカ独特のレッドパージ(赤狩り)という政治的な背景を含めて表現していきます。
レッドフォードという二枚目俳優と、けっして美人とはいえないストライサンドという女優の組み合わせも、美男美女よりもグッと惹きつけるものを感じます。
主題歌は当然、B・ストライサンドが唄っているのですが、これもまた素敵です。
アカデミー賞の主題歌賞を受賞していると思います。
以前、ここで紹介した『フェーム』の中で、唄の下手な女の子がオーディションで唄っていました。
<シネマなび>、100回目を目指して頑張ります!

『幸福』

製作/1981年
監督/市川崑
原作/エド・マクベイン
『クレアが死んでいる』
脚本/日高真也、大藪郁子、市川崑
出演/
水谷豊
永島敏行
谷啓
中原理恵

市川崑監督の名作です。
おそらく僕は市川作品の中で一番好きな作品だと思います。
1981年に公開されたのですが、原作がアメリカのエド・マクベイン「87分署シリーズ」だったために版権の問題などでビデオ化されませんでした。
公開から30年近く経ってのDVD化です。やっと観直すことが出来ました。
主演は水谷豊さん。「相棒」の濃いお芝居は苦手ですが、この作品の水谷豊さんが僕は一番好きです。
中原理恵さんが重要な役で出演しています。この頃はヒット曲(東京ららばい)などもあって素敵な歌手でもありました。20年くらい前に彼女の主演した土曜ワイド劇場の助監督をやったことがありました。
そうそう、『鉄道員ぽっぽや』でもちょっとご一緒しました。
ストーリーは刑事物なのですが、当時日本でも大ヒットしたダスティン・ホフマンとメリル・ストリープ主演の「クレイマー、クレイマー」を多分に意識した父子物のテイストが大きかったように思えます。
市川崑監督には『おとうと』という大傑作もあります。この作品と共通しているのは<銀残し>という、カラーの色調をグッと押さえて白黒映画っぽく見せる手法も確かめて観てください。

『クレイマー、クレイマー』

製作/1979年
監督/ロバート・ベントン
原作/アヴェリー・コーマン
『Kramer vs. Kramer』
脚本/ロバート・ベントン
出演/
ダスティン・ホフマン
メリル・ストリープ
ジャスティン・ヘンリー
ジェーン・アレキサンダー

外国映画は何にしようと迷ったのですが、『幸福』と観比べるのも面白いかと…この作品にしました。
地味なホームドラマですがアカデミー賞作品賞を受賞しています。またダスティン・ホフマンは主演男優賞をメリル・ストリープは助演女優賞を受賞しています。
1組の夫婦と息子の諍いの話なのですが、子供と父の台所のシーンなど…小さなディテールが上手いのです。
そして息子を演じたジャスティン・ヘイリーは8歳にしてアカデミー助演男優賞にノミネートされました。
日本だと新人賞みたいなことですが、この辺りがアメリカ・アカデミー賞の懐の深さでしょうか。
そうそう、カメラが以前紹介した「天国の日々」のネストール・アルメンドロスなんです。
もちろんアカデミー賞の撮影賞もノミネートされてますね。
監督のロバート・ベントンは元々は脚本家です。「俺たちに明日はない」が有名です。この作品のあと「プレイス・イン・ザ・ハート」という名作を撮りました。
「クレイマー、クレイマー」に続き、こちらの作品でも監督賞と脚本賞をW受賞しています。

『ディア・ハンター』

製作/1978年
監督/マイケル・チミノ
原案/マイケル・チミノ、デリク・ウォッシュバーン、ルイス・ガーフィンクル、クイン・K・レデカー
脚本/デリク・ウォッシュバーン
出演/
ロバート・デ・ニーロ
クリストファー・ウォーケン
ジョン・サヴェージ
ジョン・カザール

以前に紹介した『M★A★S★H マッシュ』は50年代の朝鮮戦争を素材にしながらも公開時にアメリカで大きな問題となっていたベトナム戦争を強烈に風刺した作品でした。
今回の『ディア・ハンター』はもっとも直接的にベトナム戦争を批判(だと思います)した作品の一つだと思います。前半に延々と結婚式の描写が続きます。アメリカの田舎町の青春群像です。
その長さにちょっと退屈もするのですが、戦場のシーンが始まるとそのゆったり流れていた時間が効果を増すのです。とても映画的な手法だと思えます。
俳優陣はすべて素晴らしい…主演はロバート・デ・ニーロ。この人に触れる必要はないでしょう。
助演にクリストファー・ウォーケン、彼はこの作品でアカデミー賞の最優秀助演男優賞を受賞しました。
ロシアン・ルーレットのシーンは映画史上に残る緊張のシーンだと思います。
ヒロインはメリル・ストリープ、こちらの触れる必要はないでしょう。
そして、J・サヴェージとJ・カザールの二人のジョン。ジョン・カザールはこの作品を遺作にガンで亡くなりました。当時、メリル・ストリープと婚約中でした。

『日本の一番長い日』

製作/1967年
監督/岡本喜八
原作/大宅壮一
『日本の一番長い日』
脚本/橋本忍
出演/
三船敏郎
加山雄三
黒沢年男
佐藤允

今回は2本とも戦争を題材とした映画になってしまいました。
この作品は現在撮影中の『日輪の遺産』(来年夏公開)の参考のために観直しました。
昭和20年8月14日から15日までの無条件降伏を受け入れる日本軍部の一日を描いた作品です。
今の日本の礎になった一日を岡本喜八監督はリアルに描いています。当時、すでにカラー映画の時代になっていたはずなのに白黒作品にしているのもリアルな感じを伝えてくれます。
俳優陣は何と言っても阿南陸軍大臣を演じる三船敏郎さん…上手いとかヘタでなく圧倒的な存在感です。
決起する将校を演じている黒沢年男さん演じる若手俳優陣が気合いが入りすぎて、僕には合いませんでした。
その上官を演じている高橋悦史さんや宮内庁の待従を演じた小林佳樹さんなどの自然体の演技が僕の心には残ります。
『ディア・ハンター』にもこの作品にも残酷なシーンもあります。

『さびしんぼう』

製作/1985年
監督/大林宣彦
原作/山中恒
『なんだかへんて子』
脚本/剣持亘、内藤忠司、大林宣彦
出演/
富田靖子
尾美としのり
藤田弓子
小林稔侍

拙作『チルソクの夏』『カーテンコール』『四日間の奇蹟』は下関三部作なんて呼ばれているようです。
よく「佐々部さんは大林映画のファンですか?」なんて聞かれます。
初期の大林宣彦監督作品は大好きでした。ことに一番好きだったのが今回の『さびしんぼう』です。
長期地方ロケに行っていた時の、撮影の休日にひとりで観に行きました。

富田靖子さんのあまりの可憐さに、そしてストーリーの切なさにポロポロと涙が零れました。 でも劇場を出るときは不思議な爽やかさに満ちていたのです。ショパンのピアノ曲をアレンジした主題歌も上手いなぁ…と感心しました。
大林宣彦監督の尾道三部作のラストがこの作品、『転校生』『時をかける少女』も合わせてご覧になると良いと思います。
そのあとに続いた新・尾道三部作では『ふたり』が良かったです。

『スケアクロウ』

製作/1973年
監督/ジェリー・シャッツバーグ
脚本/ギャリー・マイケル・ホワイト
出演/
ジーン・ハックマン
アル・パチーノ
ドロシー・トリスタン
アン・ウェッジワース

ジーン・ハックマンとアル・パチーノの競演の名作です。大学生の頃に名画座で何度も繰り返して観ました。
路上で出会った二人の男のロードムービーです。
不器用な男同士がお互いのために身体を、心を投げ出すように…芽生える友情が映画の進行と共にじっと染み込んできます。
アル・パチーノにはまだ見ぬ家族という大きなキーワードもあり、単純な男たちの旅物語ではありません。
ジェリー・シャッツバーグ監督は元々スチール・カメラマンです。何気ないカットが美しかったりするのはその影響でしょうか…オープニングの出会いのシーンはその典型です。
とにかく二人のスターの演技を堪能してください。長廻しで捉えた演技はおそらく即興のお芝居では…というカットがいっぱいあります。

『竜馬暗殺』

製作/1974年
監督/黒木和雄
脚本/清水邦夫、田辺泰志
出演/
原田芳雄
石橋蓮司
中川梨絵
松田優作

今月も日本映画は時代劇です。第1回目に紹介した『祭りの準備』の黒木和雄監督の作品です。
東京に来てびっくりした作品の一つです。白黒映画でおそらくお金も低予算です。
でもあまりに力強さに感動しました。

坂本竜馬が暗殺されるまでの3日間を描いただけの作品なのですが、竜馬を演じた原田芳雄、中岡慎太郎を演じた石橋蓮司、そして暗殺者を演じた松田優作、出演者のすべてがギラギラしていました。

60年安保から70年代という時代とこの幕末の時代が見事にリンクした青春映画です。
低予算はミエミエの映像なのですが、その粗っぽい映像を逆手に取った力強さが観客に緊張感を与え続けます。

竜馬が持つ拳銃、履いている革靴、小道具もおしゃれです。
それまでテレビの時代劇しか知らなかった僕にはカルチャーショックを与えてくれた作品です。
こんな時代劇の作り方もあるんだと…。一度ご覧ください。

『サムライ』

製作/1967年
監督/ジャン=ピエール・メルヴィル
原作/アゴアン・マクレオ
『Le Samouraï』
脚本/ジャン=ピエール・メルヴィル
出演/
アラン・ドロン
ナタリー・ドロン
カティ・ロジエ
フランソワ・ペリエ

決して時代劇ではありません。久しぶりのアラン・ドロン作品です。

始まってから20分近くセリフが一つもありません。
単調な音楽をバックに殺し屋を演じると十八番のアラン・ドロンの無表情が続きます。拳銃を扱う美しさ、なぜか右手の内側に付けた腕時計を見るしぐさ、そしてソフト帽にトレンチコートのいでたち…ことごとく憧れました。

このファッションはアラン・ドロンの定番のよ うになって、当時ダーバンのCMもこのスタイルだったように記憶しています。
田舎の高校生だった僕はダーバンのトレンチコートは買えませんでしたが、安物のトレンチコートを着ていました。腕時計も右手の内側にしていました。

この後、ジャン・ピエール・メルビル監督と組んで『仁義』『リスボン特急』などの作品を送り出しましたが、この作品が最高だと思います。
チョイ役で出演していたナタリー・ドロンが最初の奥さんになります。

アラン・ドロンは殺し屋の役をたくさん演じました…死ぬ役の時、いつも腕時計を右手の内側にしています。この作品、DVDが廃盤になっていたらゴメンナサイ。

『幕末太陽傳』

製作/1957年
監督/川島雄三
脚本/山内久、川島雄三、今村昌平
出演/
フランキー堺
南田洋子
左幸子
石原裕次郎

今月も日本映画は時代劇です。
監督は川島雄三。かの今村昌平監督、浦山桐郎監督の兄貴分です。
脚本に今村監督が、助監督に浦山監督が参加しています。
落語「居残り佐平次」に「品川心中」などを散りばめて作った脚本です。
ストーリーも面白いのですが、とにかく出演している俳優達の豪華なこと。
主演のフランキー堺さんはこれが一世一代の名演でしょう。
そして脇を固めるのが、昨年亡くなった故・南田洋子さん…これも素晴らしい。
そのライバルの女郎に左幸子。大きな役でないところに石原裕次郎、小林旭、二谷英明、等々。
画面を観ながら、しっかり探してください。クスクスと笑いながら観られるでしょう。
映画のオープニングのタイトルバックに現代(公開時の昭和32年)がいっぱい描かれます。
あれッて思うのですが…、ホントは川島監督は、作品のラストもフランキー堺さんが現代の品川を走り去っていくシーンにしたかったそうです。
会社や俳優たちに斬新過ぎると反対されて諦めたそうですが、ちょっと時代の先を行きすぎた監督だったのかも知れません。
川島監督はこの作品を最後に日活を去ったそうです。
僕が学生の頃も、ある種カルト作品のように上映され続けていました。何故だか愛される作品です。

『フェーム』

製作/1980年
監督/アラン・パーカー
脚本/クリストファー・ゴア
出演/
アイリーン・キャラ
バリー・ミラー
リー・キュレーリ
ローラ・ディーン

以前『ザ・コミットメンツ』の時にちょっと触れました。
監督も同じアラン・パーカー監督です。
まさに今、受験の真っ最中。僕の友人たちも受験生の親となり、娘さんに引率して下関から東京に来たりしています。
今回の『フェーム』、僕は大学を卒業して映画学校に入る時に観た作品です。
ニューヨークにある芸能の専門学校に入学する学生の卒業までを描いた群像劇です。
映画の成功のあと、TVドラマにもなり、日本でも放映されていました。
また、アイリーン・キャラの歌う主題歌は日本のTVドラマの主題歌としても使用されました。
アイリーン・キャラ以外はほとんど無名の俳優達で、映像の作りも含め、ドキュメンタリーを観ているようです。素材は違いますが、『三本木農業高校、馬術部』もそんな感じを狙ったのですが…。無名の俳優達でもそれぞれの力(演技力・歌唱力・ダンス)が優れていると感動を授かります。
学生食堂の中で演じられる<ホットランチ・ジャム>というナンバー、学校の表(道路)で演じられる<フェーム>、この2つのシーンは圧巻です。
映画学校に入る時に作文に、この作品のことを書いたことを今でも覚えています。この作品に登場するキャラクター達みたいな仲間に出会えるといいなぁ…と思ったものでした。もう30年も前のお話です(笑)。でも、今もそんな仲間たちと出会えることを夢見ています。

『人情紙風船』

製作/1980年
監督/山中貞雄
原作/河竹黙阿弥
『梅雨小袖昔八丈』、通称『髪結新三』
脚本/三村伸太郎
出演/
中村翫右衛門
河原崎長十郎
山岸しづ江
霧立のぼる

今年の日本映画は時代劇が流行るらしい…。
暮れから正月のTVもNHK『坂の上の雲』そして『龍馬伝』といった感じです。
若い女性の中には龍女(りょうじょ)という坂本龍馬オタクもブームになるらしい。
さすが福山雅治…!そして、イケメンから派生して、時代劇の主役たちを<マゲメン>というらしい…。不思議の国ニッポンです。

さて、この作品は昭和12年の作品です。監督は伝説の山中貞雄。弱冠26歳の時の監督作品です。
貧乏長屋が舞台の人情劇です。編集やそこに使われるモンタージュの技などがこの時代の作品なのにすでに確立しています。
でも僕が一番に感心したのは、俳優さん達のお芝居です。現代でも、制作されている時代劇を観るとあまりの俳優陣の大芝居に吹き出してしまうことがたびたびです。しかしこの作品の俳優達は現代劇のお芝居のようなセリフ廻しなのです。
それ故にリアリティが伝わるのです。驚きました。もちろんストーリーも…。
舞台になる長屋は、まるで今の<派遣村>のようです。ラストの紙風船のなんと切ないことでしょう。
山中貞雄監督作品は3本しか現存しません。小津安二郎監督や黒澤明監督に大いに影響を与えた監督です。
浅田次郎原作の小説「活動写真の女」は山中貞雄監督へのオマージュかと僕は思いました。

『自転車泥棒』

製作/1948年
監督/ヴィットリオ・デ・シーカ
原作/ルイジ・バルトリーニ
『The Bicycle Thief』
脚本/チェザーレ・ザヴァッティーニ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ
出演/
ランベルト・マッジォラーニ
エンツォ・スタヨーラ
リアネーラ・カレル
ジーノ・サルタマレンダ

外国映画も切ない人間模様を描いた作品にしました。
こちらは昭和23年に制作された作品です。もちろん白黒映画です。
監督はヴィットリオ・デ・シーカ。のちに名作「ひまわり」などを監督して、ソフィア・ローレンを大スターにした監督ですね。
この作品には著名な俳優は登場しません。と言うか、主演の父子は素人をオーディションして決めているのです。そして全編がオール・ロケ。
僕は中学生の頃に北九州の小倉井筒屋の映画サークルで観たのですが、ドキュメンタリーかと思えるような作品でした。
セリフも少なく、大きな事件が起きるわけでもなく、ただただ貧しい父子が盗まれた自転車を探し求める。
戦後、敗戦で貧しいイタリアをリアルに映し出していました。
もちろん僕が観たのは昭和47年頃なので、それなりの生活をしていたのですが…。
ハリウッドのパニック映画とかアラン・ドロンの娯楽映画を観ていた頃に、こんな映画もあるんだとショックを受けました。
『人情紙風船』もそうですが、この作品に描かれている社会も、今の日本という国と重なってくるようにも思えます。
何だか怖いです。今回は2本共に少々暗いタッチ(内容も)の作品になりました。
折角のお正月なので楽しい作品とも思ったのですが…すみません。
この不況、みんなで頑張りましょう!

『グロリア』

製作/1980年
監督/ジョン・カサヴェテスク
脚本/ジョン・カサヴェテス
出演/
ジーナ・ローランズ
ジュリー・カーメン
バック・ヘンリー
ジョン・アダムス

今回はアラサー、アラフォーと呼ばれている…頑張ってる女性達への作品。

監督はジョン・カサヴェテス。何だか聞き覚えのある名前です…そうです、今年の僕のNo.1作品『私の中のあなた』を監督したニック・カサヴェテスのお父さんです。ジョン・カサヴェテスは俳優としても有名で、『ローズマリーの赤ちゃん』や『フューリー』などに出演しています。俳優として活躍したお金でインディペンデントの映画作りを続けました。そして、興行的に最も成功した作品が今回の『グロリア』でしょう。

主演女優のジーナ・ローランズは監督の奥さんです。このジーナおばさんが子供を守りながらマフィアのボスと闘います。とにかく小気味良いアクションとストーリーの巧みさに2時間はアッという間に過ぎ去ります。

女性は必ずこのヒロインに共感出来るのではないでしょうか?
ジョン・カサヴェテスは59歳という若さで亡くなりました。残念です。

『Wの悲劇』

製作/1984年
監督/澤井信一郎
原作/夏樹静子
『Wの悲劇』
脚本/荒井晴彦、澤井信一郎
出演/
薬師丸ひろ子
世良公則
三田佳子
三田村邦彦

角川映画の大ヒット作ですね。今でもときどきBSなどで放映される名作です。
主演は薬師丸ひろ子ですが、相手役の世良公則、三田佳子、そして今はすっかりワイドショーのコメンテーターになってしまった高木美保など脇役の俳優たちもみんな素晴らしいです。

舞台女優がキーワードの作品です。作品の中で描かれる舞台劇と映画の中で描 かれる人間模様が二重写しとなって進行します。上手い脚本です。

薬師丸ひろ子はこの作品までは『セーラー服と機関銃』などのアイドル女優という評価でしたが、この作品でひと皮剥けたのではないでしょうか。澤井信一郎監督は『野菊の墓』の松田聖子など新人をうまく演出される監督です。

ラストでのヒロインがスカートの裾を持って<カーテンコール>する姿にウルウルしたのを覚えています。また、ユーミン作曲・薬師丸ひろ子の唄う主題歌も未だによくカラオケで唄います。

『天国の日々』

製作/1978年
監督/テレンス・マリック
脚本/テレンス・マリック
出演/
リチャード・ギア
ブルック・アダムス
サム・シェパード
リンダ・マンツ

<伝説の監督>テレンス・マリック監督の第2作目です。
70年代に「地獄の逃避行」とこの作品だけを残し、ハリウッドでは行方不明と言われていました。
ところが20年の月日を経て、「シン・レッド・ライン」という壮絶な戦争映画でカムバックしました。
何故、伝説の監督なのか…。20年ぶりに撮る作品の出演者たちを見るとそれは分かるでしょう?
さて『天国の日々』。…男2人女1人の関係の縺れという恒常的に描かれる愛憎劇です。
この作品が伝説として語られるのはズバリ映像です。僕の大好きなF・トリュフォー作品の撮影監督ネストール・アルメンドロスの自然光を中心 にいた照明効果。ことに<マジック・アワー>を利用して撮影された農場のロケーションは想像を絶します。
<マジック・アワー>とは日没直後の20分くらいの太陽光の漏れのような色彩を狙う時間帯のことです。
三谷幸喜監督が「マジック・アワー」という映画を作りましたが、これはほとんどがセット撮影で何だか意図が分かりませんでした。
映画は光と影の芸術と言われます。まさにこの作品は堪能出来るでしょう。
大ヒット作品ではありませんが、米アカデミー撮影賞を受賞しています。
この辺りにアメリカのアカデミー賞の懐の深さを感じます。
主演はリチャード・ギア、当時はまだ無名でした。

『サンダカン八番娼館・望郷』

製作/1974年
監督/熊井啓
原作/崎朋子
『サンダカン八番娼館』
脚本/広沢栄、熊井啓
出演/
栗原小巻
高橋洋子
田中絹代
水の江瀧子

『黒部の太陽』でお世話になったにもかかわらず、これまで熊井啓監督の作品を紹介していませんでした。
すみません。今回は下関出身の大スター田中絹代さんが出演されている『サンダカン八番娼館・望郷』です。
太平洋戦争のときにボルネオに送り込まれた<からゆきさん>と呼ばれる娼婦の物語です。
大戦時を高橋洋子さんが、そして戦後の今(撮影当時)を田中絹代さんが演じています。
そして、取材しているルポライターを栗原小巻さんが…。
映画は今と大戦時の二つの時代が描かれています。『夕凪の街桜の国』などの構成と似ていますね。
こういう場合、大戦時を大きく描くほうがドラマ性は強調されてエンタテインメントとしては成立し易くなります。夕凪の街〜でも、前半のほうが劇的で評価もされました。

『サンセット大通り』

製作/1950年
監督/ビリー・ワイルダー
脚本/チャールズ・ブラケット、ビリー・ワイルダー、D・M・マーシュマン・Jr
出演/
グロリア・スワンソン
ウィリアム・ホールデン
エリッヒ・フォン・シュトロハイム
ナンシー・オルソン

ビリー・ワイルダー監督の名作です。
同監督の『情婦』を紹介したときに、いつか紹介したいと書いたように思います。

ハリウッド映画界の内幕ものです。大女優がカムバックに掛けるというお話、舞台もほとんどがその大女優の邸宅内です。若い脚本家が迷い込むのですが、まだスターになる前のウイリアム・ホールデンが演じています。売れなくなった大女優を演じるのは、当時も大女優グロリア・スワンソン、そして元映画監督の執事を演じるのがエリック・フォン・シュトロハイム、彼はヨーロッパ出身の名監督です。
実際にこの映画の20年くらい前にグロリア・スワンソン主演映画の監督をやっています(この作品は未完)。そしてその映像も作品に使われています。
サスペンスの要素も含まれた作品ですが、何と言っても主演のグロリア・スワンソンの鬼気迫る演技に圧倒されます。特にラストシーンは…。

若い女優さんと仕事をするときに勧める映画の1本です。
同じ年に公開された演劇界を描いた『イブの総て』と観比べると面白いです。アカデミー賞は『イブの総て』でしたが、僕は『サンセット大通り』のほうが好きです。

『東京物語』

製作/1953年
監督/小津安二郎
脚本/野田高梧、小津安二郎
出演/
笠智衆
東山千栄子
原節子
杉村春子

同じ頃の日本映画の傑作です。
小津安二郎作品を1本も紹介していませんでした。すみません…。
そして小津作品と言えば、やはりこの作品になります。

尾道の老夫婦が東京の子供たちを訪ね歩くだけで、大きな事件は何も起きません。
でもそのテーマは、今の時代にきっちりと繋がる<高齢化社会>の問題や不安を提示しています。50年以上前に小津監督は先取りしていたのだと思います…すごい!

20代の頃に観たときは、何とも間延びして退屈な映画に感じました。ところが30代、40代になって観直すと感じる箇所がどんどん増えていくのです。

俳優陣も素晴らしいです。主演の笠知衆さん、東山千栄子さんはもちろんですが、僕は長女役の杉村春子さんが印象的でした。

『独裁者』

製作/1940年
監督/チャールズ・チャップリン
脚本/チャールズ・チャップリン
出演/
チャールズ・チャップリン
ポーレット・ゴダード
ジャック・オーキー
レジナルド・ガーディナー

今回のシネマなびは40回目です。いつまで続けるのやらと思いつつ、もう3年半も経っているのに、我ながら驚きました。
今回はチャップリンです。まだ一つも紹介していないのを恥ずかしく思いました。
チャップリンの作品では『街の灯』が一番好きなのですが敢えて『独裁者』にしました。
この作品の大きさに敬意を表します。
ドイツでヒトラーが猛威を振るっていた時代…戦争の先が見えていないときに、ヒトラーを徹底して批判しています。この命懸けの勇気こそが映画監督だと思います。
ラストのヒューマニズム溢れる長時間の演説は圧巻です。
高校生の時、リバイバル上映で初めて観たのですが、わけもなく涙が零れました。
ハンナ、ハンナ…の呼び掛けが<ハナ、ハナ>と聞こえました。
僕の娘の<花>という名前はこの作品から貰いました。

『飢餓海峡』

製作/1964年
監督/内田吐夢
原作/水上勉
『飢餓海峡』
脚本/鈴木尚之
出演/
三國連太郎
風見章子
左幸子
加藤嘉

日本映画は娯楽ミステリーの傑作です。
水上勉原作小説を内田吐夢監督が演出しています。
物語も複雑に人間模様が絡んで面白いのですが、とにかく俳優陣が素晴らしいのです。それは当然、内田吐夢監督の演出によるのですが…。
まずコメディアンの伴淳三郎さんの刑事さん、お笑いの一流は俳優としても一流なのを見事に提示しています。もちろん三国連太郎さんも良いのですが、僕は左幸子さん演じる娼婦にすっかりやられました。
高倉健さんも登場しますが、この作品では少し霞んでしまっているかも…。
<爪>がなんとも表現し辛い小道具として扱われます。
映画学校時代に故浦山桐郎監督に指導していただいた短編作品「熱愛のメモリー」に、この<爪>のアイデアをパクらせて貰いました(笑)。
浦山監督もTVでこの『飢餓海峡』をリメイクされています。

『東京裁判』

製作/1983年
監督/小林正樹
原案/稲垣俊
脚本/小林正樹、小笠原清

8月は広島・長崎の被爆、そして終戦記念の日があります。
9日に広島秋葉市長が素晴らしい平和宣言をしたのに、NHK以外の民放各局は某女性タレントの失踪ばかりを報じるばかりで、まったくの無視でした。何とも情けないマスメディアでした。

この時期だけでも黒木監督「TOMORROW明日」や今村監督「黒い雨」そして拙作ですが「夕凪の街 桜の国」が上映されるといいなって思います。

長くなりましたが今回の『東京裁判』。4時間半に渡るドキュメンタリー映画です。下関にも所縁のある小林正樹監督がアメリカ政府によって公開された膨大なフィルムを再構築した大労作です。
1983年に公開されたとき、僕は映画学校の学生だったのですがとにかく圧倒されました。編集と音楽とでドラマチックな緊張感を持続させてくれます。

この時期観るべき作品の決定版…かと、今回紹介することにしました。
「プライド・運命の瞬間」(伊藤俊也監督)や「ニュールンベルグ裁判」(スタンリー・クレイマー監督)と見比べるのも面白いでしょう。

『ある日どこかで』

製作/1980年
監督/ヤノット・シュワルツ(ジュノー・シュウォーク)
原作/リチャード・マシスン
『Somewhere in Time』
脚本/リチャード・マシスン
出演/
クリストファー・リーヴ
ジェーン・シーモア
クリストファー・プラマー
テレサ・ライト

こちらは打って変わってラブ・ファンタジーの傑作です。
主演はスーパーマンで一躍スターの仲間入りを果たしたクリストファー・リーブ。残念ながら落馬の事故で車椅子での生活を余儀なくされ、映画界からは遠い存在になり、04年に52歳で亡くなりました。しかし、彼の真摯な生き様は多くの人に勇気を与え、もっとも尊敬されるハリウッド・スターの一人でした。

またヒロインのジェーン・シーモア、彼女も日本ではあまり馴染みのない女優さんですが、僕には「007/死ぬのは奴らだ」のボンド・ガールのイメージが強烈です。全007作品で一番好きな女優さんだから…。

今ではよくある時空を超えたラブ・ストーリーですが、二人の主演俳優の清潔感や音楽のうまい使い方…。公開から30年経てもコアなファンがたくさん存在する作品です。

この7月にDVDの廉価版が発売されているので、是非保存版に…。
決して業者の回し者ではありません…僕も購入しました。

『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ』

製作/1984年
監督/セルジオ・レオーネ
原作/ハリー・グレイ
『Once Upon a Time in America』
脚本/レオナルド・ベンヴェヌーチ、ピエロ・デ・ベルナルディ、エンリコ・メディオーリ、フランコ・アルカッリ、セルジオ・レオーネ、フランコ・フェリーニ
出演/
ロバート・デ・ニーロ
ジェームズ・ウッズ
エリザベス・マクガヴァン
ジェニファー・コネリー

イタリアのセルジオ・レオーネ監督作品です。クリント・イーストウッド主演の「荒野の用心棒」「夕陽のガンマン」といったマカロニ・ウエスタンの巨匠です。僕も中学生の頃、TVの洋画劇場で覚えた名前でした。

今回の作品はギャング映画です。1930年代、禁酒法時代を背景に子供たちがギャングの世界でのし上がっていくまでを、そしてさらに主人公の老年時代までもが叙情的に描かれます。イタリア人監督のレオーネがアメリカという国に憧れた想いをアクション監督らしいケレン味で4時間近くを見せ切ってくれます。

時代が交錯しながらの4時間は相当に辛抱と集中が必要ですが、DVDで観るならリモコンで確認事をやりながらでも構わないと思います。是非、チャレンジしてみてください。

『仁義なき戦い/広島死闘篇』

製作/1973年
監督/深作欣二
原作/飯干晃一
『仁義なき戦い』
脚本/笠原和夫
出演/
菅原文太
千葉真一
北大路欣也
梶芽衣子

こちらはヤクザ映画の決定版です。深作欣二監督3本目の紹介作品です。

『仁義なき戦い』から始まって<広島死闘篇><代理戦争><頂上作戦><完結篇>と5部作です。
5本すべてを紹介したいのですが今回は敢えて2本目の<広島死闘篇>にしました。他4作品は主人公である菅原文太さん扮する広能昌三が軸のお話ですが、この作品だけは北大路欣也さんと千葉真一さんが主役の、いわば番外篇です。この作品は青春映画としても最上級の映画になっています。

実話に基づいたストーリーなのですが、第2次大戦の傷跡も考えさせながら、アンチ・ヒーローが主役の物語をしっかりとラストまで感情移入させながら見せ切ってしまう深作監督の力量に最敬礼です。

『ブラザー・サンシスタ・ムーン』

製作/1972年
監督/フランコ・ゼフィレッリ
脚本/スーゾ・チェッキ・ダミーコ、ケネス・ロス、リナ・ウェルトミューラー、フランコ・ゼフィレッリ
出演/
グラハム・フォークナー
ジュディ・ボウカー
リー・ローソン
アレック・ギネス

フランコ・ゼフィレッリの名作です。『ロミオとジュリエット』で大ヒットを飛ばした後に発表した作品です。僕は高校1年生の頃にこの作品を観ました。ちょうど社会科で聖書を読んだりしていたのでよく覚えています。聖フランシスコの半生(青春期)を描いています。
宗教映画にありがちな説教臭さを意識しながら観に行ったのですが、清々しい青春映画でした。そして本来、人がどのように生きていくことが幸せなんだろう…みたいなことを考えさせられました。
主人公を演じたグレアム・フォークナー、そしてヒロインのジュディ・バウカーのふたりの清潔感が作品をさらによいものにしています。『ロミオとジュリエット』の時も新人抜擢だと思いますが、フランコ・ゼフィレッリ監督は上手いですね。<自然>がキーワードの美しい映画です。タイトルの意味もよく伝わってきます。
フランコ・ゼフィレッリ監督は以前紹介した『若者のすべて』などの巨匠ルキノ・ヴィスコンティ監督の助監督からキャリアをスタートさせています。映画だけでなくオペラ演出もやったり、80歳近くなって撮った『永遠のマリア・カラス』も力のある作品でした。

『M★A★S★Hマッシュ』

製作/1970年
監督/ロバート・アルトマン
原作/リチャード・フッカー
『MASH』
脚本/リング・ラードナー・Jr
出演/
ドナルド・サザーランド
エリオット・グールド
トム・スケリット
ロバート・デュヴァル

NHK−BSの<日めくりタイムトラベル>という番組をご存知でしょうか?昭和のある一年間にスポットを当て、3時間で紹介するという番組です。僕の大学時代の同期・T君がディレクターをやっています。
今月のOAは昭和45年でした。昭和45年の日本映画は『家族』、以前紹介した山田洋次監督の名作です。僕はずっと後、大学生になって『家族』を観ました。
この年リアルタイムで観て、一番ショックを受けた映画がこの作品です。
巨匠ロバート・アルトマン監督作品です。朝鮮戦争を背景に野戦病院をブラック・ユーモアたっぷりに描いていますが、これは当時アメリカが直面していたベトナム戦争を強烈に風刺しているのです。
野戦病院の治療シーンなど血が飛び散って、ホントにリアルなのですが、これもアルトマン監督がベトナムの惨さを意識してこだわったのだと後々になって知りました。こんな姿勢がずっと映画界の尊敬を得ていたのだと思います。
俳優陣も個性豊かで素晴らしいです。ことにエリオット・グールドは当時お気に入りの俳優でした。

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『サイコ』

製作/1960年
監督/アルフレッド・ヒッチコック
原作/ロバート・ブロック
『サイコ』
脚本/ジョゼフ・ステファノ
出演/
アンソニー・パーキンス
ジャネット・リー
ジョン・ギャビン
マーティン・バルサム

なんとこれまでヒッチコック作品を一つも紹介していませんでした。前回に引き続き反省です。ヒッチコック作品も名作が多くありすぎて困ってしまいました。ちょっとユーモアの利いた作品などもあるのですが・・・。いろんな意味で一番ヒッチコックらしい『サイコ』にしました。
映画が始まると広い街の外観からゆっくりと一つの窓にカメラは近づいていきます。その一室で一組の男女の情事・・・。もうドキドキさせられます。今ではいろんな作品で応用されている撮影技法ですが・・・。ヒッチコックは観客をハラハラさせるいろんなテクニックを編み出した職人監督です。この作品の一番有名なバスルームの殺害シーン・・・、このシーンに1カットも、人の身体に包丁が突き刺さるなんて、グロテスクなカットはありません。編集と音楽とで表現しているのですがホントに怖いです。このシーンもたくさんのサスペンス映画に真似されています。
また当時大スターだったジャネット・リーが映画が始まって30分くらいで殺害されてしまうというのも観客をフェイクしたのでした。例えば黒木瞳さんが主演と思って観に行ったら、すぐに死んでしまった感じですね・・・。その後、回想シーンとかもありません。
血まみれのシーンなどもありませんから女性も楽しめる作品です。

『雨月物語』

製作/1953年
監督/溝口健二
原作/上田秋成
『雨月物語』
脚本/川口松太郎、依田義賢
出演/
京マチ子
水戸光子
田中絹代
森雅之

こちらは所謂<おばけ>のお話なのですが怖がらせの映画ではありません。人間が本来持っている愚かさや儚さを怪奇性みたいなことを素材に描いています。溝口健二監督の徹底的なリアリズムが霊を逆に際だたせています。白黒映画ですがソフトなタッチの映像作りも効果的です。『サイコ』も白黒映画ですが、二つの作品の映像だけ比べて見るのも面白いです。
京マチコさんはリアリズム基調の作品でもすばらしいのですが、この作品では能の表情や動きを取り入れているそうで、確かにリアリティから離れているように思えるのですが死霊という役には効果的なようにも思えます。そこに嵌っていく森雅之さんの演技は時代劇にしては現代劇のようなリアリティがあります。これも溝口監督の狙いでしょう。
ヴェネチア映画祭で<銀獅子賞>を受賞した作品です。今のヴェネチア映画祭とはずいぶんと違った基準だったようですね。

『ライアンの娘』

製作/1970年
監督/デイヴィッド・リーン
脚本/ロバート・ボルト
出演/
ロバート・ミッチャム
サラ・マイルズ
トレヴァー・ハワード
ジョン・ミルズ

これまで紹介してきた作品を見直してデビット・リーン監督の作品が入っていないことに反省しました。男っぽい映画を大きなスケールで描く監督です。

『アラビアのロレンス』『戦場にかける橋』など名作はたくさんありますが、らしくない『ライアンの娘』を選びました。不倫を素材にした恋愛映画です…と書いてしまうと身も蓋もないのですが、恋愛を軸に人の尊厳や愚かさをしっかりと見せてくれます。
大人の映画って感じでしょうか。

『ゴッド・ファーザー』も観るときの年齢で感じ方が違うと書きましたが、この作品もまさにそんな感じです。二十代の頃に観た時はちょっと退屈したりもしたのですが、この歳になって見直すといろんな箇所に発見があり、感動がありました。きっと見終わった後にいろんなことを考えさせてくれるでしょう。

同監督の『ドクトル・ジバゴ』もお勧めです。こちらも男女の想いを大河ドラマで見せてくれます。

『遠雷』

製作/1981年
監督/根岸吉太郎
原作/立松和平
『遠雷』
脚本/荒井晴彦
出演/
永島敏行
ジョニー大倉
石田えり
横山リエ

昨年、日本映画批評家大賞の授賞式でご挨拶させていただいた根岸吉太郎監督の作品です。根岸監督は『サイドカーに犬』で監督賞を受賞されていました。

僕が学生の頃、華々しくデビューされた監督さんで、憧れの監督さんでした。家内が『探偵物語』にちょっこっと出演したときも<色っぽい監督さん>だなんて言っていたような…。

さて『遠雷』は埼玉の若いお百姓さんのお話です。公開当時の若者をリアルに等身大に表現していて、上映時間中ずっとスクリーンに惹きつけられました。

永島敏行さんと石田えりさんが主役なのですが、二人のラブシーンにもビックリさせられ、そしてドキドキしました。また結婚式の後、二人が唄う「わたしの青い鳥」にはポロポロと涙が零れてしまいました。日本映画の名シーンの一つです。

この当時、永島敏行さんは次々に話題作の主演をされていて、決してうまい演技ではないけどリアリティがあって、僕には魅力的は俳優さんでした。『出口のない海』に出演していただいたときには二人で飲みに行き、映画の話をたくさん聞かせていただきました。

『冒険者たち』

製作/1967年
監督/ロベール・アンリコ
原作/ジョゼ・ジョヴァンニ
『冒険者たち』
脚本/ロベール・アンリコ、ジョゼ・ジョヴァンニ、ピエール・ペルグリ
出演/
アラン・ドロン
リノ・ヴァンチュラ
ジョアンナ・シムカス
セルジュ・レジアニ

久しぶりのアラン・ドロン主演作品です。でもこの作品はアラン・ドロン主演というよりは、リノ・バンチェラ、ジョアナ・シムカスと3人が主役の作品です。男二人と女一人の愛情・友情の物語。いろんな形で語り尽くされ、今でも何度となく繰り返されている素材です。女二人・男一人でなく、どうして男二人・女一人なんだろう…?

ホントにシンプルなストーリーですが、ジョアナ・シムカスはこの作品たった1本で、日本では大人気のスターになりました。レティシアという役名なのですが、高倉健さんのお友達がヨットにこの<レティシア>という名前を付けた…なんてお話も聞かせていただいた記憶があります。アラン・ドロンもカッコいいのですが、リノ・バンチェラも凄く渋いのです。大人なんですよね…。ラストはちょっと悲しいですが心に残るエンディングです。

30年くらい前に日本でもリメイクされました。三浦友和さん、藤竜也さん、紺野美沙子さんが主演の『黄金のパートナー』…。調べてみると西村京太郎さんが原作なので、リメイクではありませんね。僕は当時からずっとリメイクだと思っていました。ごめんなさい、西村京太郎さん…。

サントラに入っているアラン・ドロンの唄う<愛しのレティシア>、今でもよく聴きます。

『その木戸を通って』

製作/1993年
監督/市川崑
原作/山本周五郎
『その木戸を通って』
(「おさん」新潮文庫所収)
脚本/中村努、市川崑
出演/
浅野ゆう子
中井貴一
フランキー堺
井川比佐志

昨年公開された市川崑監督の作品です。製作は1993年、僕もチーフ助監督として参加していました。90分ちょっとの時代劇ですが、一度も殺陣回りのシーンがありません。と言うか、主人公が一度も刀を抜かない時代劇です。当時、NHKとCXにしかハイビジョン・カメラはなくて、この作品は日本で初めてハイビジョン・カメラで撮影した時代劇だと思います。とにかく、きめ細かく映してしまうので、メイクさんや床山さんは何度もテストを繰り返して、新しいカツラを研究しました。主演の中井貴一さんはお芝居よりもカツラのバレなどが気になってストレスを相当に抱えていたように思います。市川崑監督は新しいものが大好きな監督でしたから、撮影も興味津々で楽しんでいたように思います。

僕はチーフ助監督になりたてで大巨匠との仕事でしたから、毎日が緊張の連続でした。先に決まっていた宮沢りえさんと本木雅弘さん主演のTVドラマ「西遊記」をお詫びしてお断りさせていただき、この作品に参加しました。今となっては市川崑監督に一度だけでも付くことが出来て良かったと思います。『たそがれ清兵衛』よりも10年も前にこんな時代劇を企画して撮影した市川崑監督は本当に素晴らしいと思います。

『プライドと偏見』

製作/2005年
監督/ジョー・ライト
原作/ジェーン・オースティン
『高慢と偏見』
脚本/デボラ・モガー
出演/
キーラ・ナイトレイ
マシュー・マクファディン
ドナルド・サザーランド
ブレンダ・ブレシン

前回の『つぐない』でファンになったキーラ・ナイトレイ主演作品。監督も同じジョー・ライトです。
この作品がデビュー作(当時33歳)の36歳。驚くべき才能だと思います。この作品にも冒頭の舞踏会のシーンでの長回しがあります。
『つぐない』の海岸のシーンと同様に映画的な豊かさを感じさせてくれます。どのくらいリハーサルを重ねたのだろう。本当に素晴らしい。
今作のヒロインも背筋が伸びて凛としていて、自分の作品のヒロインに近い感じです。

物語は普遍的な恋愛ドラマなのですが、ロケーション・美術・衣裳などがホントに考慮されていて、何よりも俳優たちのお芝居が完璧に制御されています。

奇抜な編集(最近はすごく細かい編集が流行りのようですが)や凝ったカメラワークなどもありません。
しっかりと俳優たちの力量を信頼し、また自分の演出も信じているようで、とてもオーソドックスです。

改めて、こういう作品作りが力強いのだと感じさせられます。この監督(ジョー・ライト)は本当に注目の監督さんだと思います。
前回、「朗読者」という小説に触れました。今年の米・アカデミー賞の作品賞に『愛を読むひと』というタイトルでノミネートされています。夏の公開が楽しみです。

『ホテル・ルワンダ』

製作/2004年
監督/テリー・ジョージ
脚本/テリー・ジョージ、ケア・ピアソン
出演/
ドン・チードル
ソフィー・オコネドー
ホアキン・フェニックス
ニック・ノルティ

昨夏NHK-BSで放映されたのを録画したまま…やっと観ました。
素晴らしい作品でした。いつも作品と撮るときに<何のためにこの作品を撮るか>ということを自問自答します。

もちろん、ビジネス(商売)のため…というのもあって良いのですが、僕は観客の皆さんに勇気を持ってもらいたい…とか、生きていくってどんなことだろう…とかを考えてもらいたいとか、たかが映画ですが、されど映画だと思ってもらえる作品作りを心掛けます。

まさに『ホテル・ルワンダ』はそんな作品でした。家族を一つの軸に国家や民族を語ります。そして、最期はまた家族という小さなテーマに戻ってくるのです。みんなの歌声が心に響きました。こんな映画の作り手になりたいと思いました。

『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』

製作/2007年
監督/若松孝二
原作/掛川正幸
『実録・連合赤軍 あさま山荘への道程』
脚本/若松孝二、掛川正幸、大友麻子
出演/
坂井真紀
ARATA
並木愛枝
地曵豪

前回、日本映画の昨年のベストを紹介と書きました。『実録・連合赤軍』です。内容云々は置いて、僕はこの作品を撮り上げた若松孝二監督に敬意を表します。
数年前に同じ題材を権力側から描いた作品がありました。体制に向かっていった若者たちが起こした事件を、体制側を描いてどうするの?…と単純に思いました。僕は少なくとも体制に向かう側を描く監督でいたいと思います。

『つぐない』

製作/2007年
監督/ジョー・ライト
原作/イアン・マキューアン
『贖罪』
脚本/クリストファー・ハンプトン
出演/
キーラ・ナイトレイ
ジェームズ・マカヴォイ
シアーシャ・ローナン
ロモーラ・ガライ

キネマ旬報の映画評論家によるベストテンが発表になりました。
第1位の『ノーカントリー』には驚きました。今、親族間の殺人や無差別の殺人事件が頻繁に起こり、日本という国は病んでいるのでは…と思ったりするのですが、このベストテン第1位の選出もまた病んでいるのではないかと…。ただただ殺戮をリアルに見せるだけのこの作品…僕には理解できない選出です。せめて、2月に発表になる<読者選出ベストテン>が『ノーカントリー』にならないことを祈るのみです。
僕の第1位は『つぐない』でした。幼い子供の心の<恐ろしさ>が二人の姉妹の人生を動かしていきます。人を愛し続けること、自分の過ちを贖罪していくこと、さまざまな人生の機微を感じさせてくれる作品です。そして上品なミステリーと上品な映画的な技巧(例えばタイプライターの音など)を駆使した作品になっています。フランスの砂浜での長廻しで撮った1カットも驚嘆させられました。同じような一途な感情を表現しても『ラスト、コーション』みたいな直情的な描き方ではありません。こちらも映画評論家の皆さんは高評価でしたが…。
キーラ・ナイトレイというきれいな女優さんのファンになってしまいました…。

『イングリッシュ・ペイシェント』

製作/1996年
監督/アンソニー・ミンゲラ
原作/マイケル・オンダーチェ
『イギリス人の患者』
脚本/アンソニー・ミンゲラ
出演/
レイフ・ファインズ
ジュリエット・ビノシュ
ウィレム・デフォー
クリスティン・スコット・トーマス

日本映画の第1位はまだDVDになっていないので、DVD化されたら書こうと思います。
そんなわけで上品な恋愛(悲恋)映画の名作をもう一つ。13年前の『イングリッシュ・ペイシェント』。米・アカデミー賞の作品賞などを受賞しています。一つの恋愛が回想として、そしてもう一つの恋愛が現実の進行として描かれます。観客に考えることを提起します。長尺の作品なので少々疲れますが、その疲労感も鑑賞後には気持ちよく思えるでしょう。
監督はアンソニー・ミンゲラ。米・アカデミー賞の監督賞も受賞しています。このあと、僕の大好きな『太陽がいっぱい』を『リプリー』というタイトルでリメイクしましたが、こちらはもう一つの出来でした。10年くらい前に「朗読者」というドイツの作家の小説があって、この本の帯にアンソニー・ミンゲラ監督が映画化とあったのですが実現しませんでした。こちらは凄く期待していたので残念でした。
上記『つぐない』の最後にインタビュアーが出てきます。そのインタビュアーがアンソニー・ミンゲラ監督です。そして、その出演を最後に昨年の夏、彼はガンにより54歳の若さで亡くなりました。

『ハスラー』

製作/1961年
監督/ロバート・ロッセン
原作/ウォルター・テヴィス
脚本/ロバート・ロッセン 、シドニー・キャロル
出演/
ポール・ニューマン
ジャッキー・グリーソン
パイパー・ローリー
ジョージ・C・スコット

もう一年が終わろうとしています。
今年亡くなった偉大なスターにポール・ニューマンがいます。彼の主演作は『明日に向かって撃て!』を嘗てここで紹介しました。今回は『スティング』も考えましたがロバート・レッドフォードが共演ということもあったりしたので『ハスラー』にしました。
ポール・ニューマンの出世作ですね。
この作品でもアカデミー主演男優賞にノミネートされました。小さな規模の作品ですが脇役の俳優たちも素晴らしく、緊張感がずっと持続する作品です。ヒロインはパイパー・ローリー。僕の大好きな『キャリー』では病的な母親を演じていました。この映画でもヒロインなのですが、陰のあるアルコール依存の女性を演じます、命を投げ出して主人公に<人らしさ>を教えます。また、嫌な悪役を演じるジョージ・C・スコットも素晴らしいです。
ニューマンはこの作品ではアカデミー賞を取れませんでしたが、20数年後『ハスラー2』で見事アカデミー主演男優賞を受賞しました。でも僕はこちらの役の方が断然良いと思います。因みに『ハスラー2』の監督はマーティン・スコセッシでした。

『復讐するは我にあり』

製作/1979年
監督/今村昌平
原作/佐木隆三
脚本/馬場当
出演/
緒形拳
三國連太郎
ミヤコ蝶々
倍賞美津子

こちらは今年亡くなった緒形拳さん主演の作品です。
野村芳太郎監督の『砂の器』『鬼畜』、五社英雄監督の『薄化粧』『陽暉楼』、渋いところでは池端俊策監督の『あつもの』などいろいろと考えましたが、結局『復讐するは我にあり』です。監督は今村昌平監督。今村監督には白黒映画の名作『赤い殺意』や『にっぽん昆虫記』などたくさんありますが、後期で一番好きな作品がこれです。僕が絶対に描くことのない殺人鬼が主役ですが、なんだかこの人物がきめ細かに描かれたいて、もちろん極悪非道な人物なのですが、妙におかしな愛嬌や優しさを感じさせるのです。そして、『ハスラー』もそうですが、脇を固める俳優さん達がすべて素晴らしい。倍賞美津子さん、小川真由美さん、三国連太郎さん、ミヤコ喋々さん、清川虹子さん等々。こうしてこの原稿を書いていても、資料もないのにツラツラと名前が出てきます。
『優駿』でご一緒した時に、馬の出産シーンを待つ間、じっと馬房の前で母馬を見つめていた緒形拳さんの横顔を今でも思い出します。
昨年、柳葉敏郎さんでTVドラマとしてリメイクされました。丁寧に撮られてはいましたが、この作品には及ばなかったです。

『八月の狂詩曲(ラプソディー)』

製作/1991年
監督/黒澤明
原作/村田喜代子
脚本/黒澤明
出演/
村瀬幸子
吉岡秀隆
大寶智子
鈴木美恵

前回の約束通り、伊嵜充則君の出演作を…。
黒澤監督の『夢』も考えましたが(1エピソードですが印象的)、この作品を選びました。
長崎を舞台にした<被爆>を扱った作品です。以前、ここでも紹介した『デルス・ウザーラ』以降、晩年の黒澤作品では一番好きな作品です。
『夕凪の街 桜の国』を撮るときに少しだけ意識しました。この作品も現代を描きながら、主人公のお婆さんの意識にある被爆を描き出しているからです。ラストシーンの強烈な描写は賛否両論あると思いますが、黒澤監督らしい、映画的なラストシーンに思えました。僕にはきっと出来ない表現です。

『アラバマ物語』

製作/1962年
監督/ロバート・マリガン
原作/ハーバー・リー
脚本/ホートン・フート
出演/
グレゴリー・ペック
メアリー・バーダム
フィリップ・アルフォード
ジョン・メグナ

今回も子役が素晴らしかった作品を…。
最近古い映画のDVDが格安で手に入ります。
「黒部の太陽」の稽古は錦糸町という街で行われたのですが、駅の露天のショップで3枚で千円というのに惹かれて購入した作品の一つです。
僕の好きな法廷モノとも言える作品です。
人種差別が根強いアメリカの町で、黒人の弁護をする弁護士一家と町の人たちの確執を描いたドラマです。グレゴリー・ペックが正義感溢れる弁護士を演じます。
二人の子供を抱えているのですが、特に娘役の子が素晴らしいです。彼女の目線で人々を描いているのも上手いです。
ロバート・マリガンには『おもいでの夏』という名作もあります。

『十五才 学校4』

製作/2000年
監督/山田洋次
原案/松本創
脚本/山田洋次、朝間義隆、平松恵美子
出演/
金井勇太
麻実れい
赤井英和
秋野暢子

舞台『黒部の太陽』の稽古も進んでいます。石原裕次郎=中村獅童、三船敏郎=神田正輝というメイン・キャストですが、佐々部組常連の俳優さん達もたくさん出てもらっています。中でも金井勇太君と伊嵜充則君は歌い踊るシーンがあって大変です。
この『15才 学校4』は金井君の主演作品。監督は山田洋次監督です。
個人的には『学校2』が好きだったのですが、この作品を観て金井君を知りました。あまりに吉岡秀隆さんに似ていて驚きました。お芝居の感じも似ていて、僕はすっかりファンになったのでした。
基本的にはロードムービーです。麻実れいさん扮するトラック運転手とその息子さんとの出会いと別れのエピソードが秀逸です。そして、屋久島に渡ってからは故・丹波哲郎さんの熱演。15才の少年の成長物語が見事です。金井君はいつまでもこの作品でもないと思いますが、やはり忘れられない映画ですね。確か、デビューは臼井Pも参加していた『ズッコケ三人組』だったでしょうか?…。
次回は伊嵜君の出演作品を紹介しようと思います。

『リトル・ダンサー』

製作/2000年
監督/スティーヴン・ダルドリー
脚本/リー・ホール
出演/
ジェイミー・ベル
ジュリー・ウォルターズ
ゲイリー・ルイス
ジェイミー・ドレイヴン

こちらは11才の少年の物語。久しぶりのイギリス映画です。
ひなびた炭坑町の貧乏な家庭の少年がクラシック・バレエに夢中になります。田舎町では男がバレエなんて…とバカにされ、家族も金が掛かると大反対。しかし、少年のバレエの才能は凄い…。
主演の少年が素晴らしいです。踊りのシーンも、普通のお芝居も…。とにかく感動します。また、家族を演じるお父さん、お兄さんも上手いんです。よく<子供と動物には敵わない>なんていうのですが、僕は少々違います。
この主人公の少年が子供だから…ではなく、踊りとお芝居という力を持った俳優さんだから感動させて貰えるのだと思いました。
夢が叶うラストシーンには本当にやられます!!
地味な作品ですが、大きな、豊かな作品だと思いました。

『仁義の墓場』

製作/1975年
監督/深作欣二
原作/藤田五郎
脚本/鴨井達比古
出演/
渡哲也
梅宮辰夫
郷英治
山城新伍

今、初挑戦のTVドラマ『告知せず』の撮影真っ最中です。
主演は渡哲也さん、滝沢秀明さん、高畑淳子さん他。
そんな訳で今回は渡哲也さん主演の『仁義の墓場』をご紹介します。深作欣二監督作品です。『仁義なき戦い』シリーズの直後くらいに撮った作品だと思います。『仁義なき戦い』シリーズの俳優陣も素晴らしかったのですが、この作品の渡さんは鬼気迫る迫力があります。主人公のキャラクターはこれ以上はないくらいに破綻した人格のやくざなのですが、とにかく渡さんの凄みに圧倒されます。
体調を崩され、NHKの大河ドラマを降板された直後の作品だったのでは…。そしてこの作品のあとにもすぐにまた体調を崩されたのではなかったかと…。麻薬で人格を失っていく様が本当にリアルで、おそらくご自身の体調も大変だったのではとスクリーンからも感じられます。それを容赦なく撮りきった深作監督も凄いです。多岐川裕美さん他のキャスト陣もそれに引っ張られて良いです。
映画学校時代、この映画のポスターをアパートの部屋のドアに貼っていたのを思い出します。

『プリティ・リーグ』

製作/1992年
監督/ペニー・マーシャル
原作/キム・ウィルソン、ケリー・キャンディール
脚本/ローウェル・ガンツ、ババルー・マンデル
出演/
トム・ハンクス
ジーナ・デイヴィス
ロリ・ペティ
マドンナ

いよいよ北京オリンピックが始まります。3年前に北京に行った時にホントにここでオリンピックがやれるのか?…と思ったのですが、とにかく無事に終わることを祈ります。密かに金メダルを期待しているのが女子ソフトボール。星野ジャパンが大きく取り扱われていますが、ずっとメダルに近いのは女子ソフトボールだと思います。

今回の『プリティ・リーグ』はソフトボールではなく、硬式野球の女子プロリーグのお話。1950年代くらいにほんの短い間、女子のプロ野球があったんですね。ジーナ・デイビスが主演ですが、あのマドンナも主役の一人です。トム・ハンクスが監督役でいい味を出しています。野球シーンもしっかりと撮影されているのですが、何と言ってもラストに用意された素敵なエンディング。涙がポロポロと零れました。野球が苦手だという女性でも楽しめる映画です。

『死刑台のエレベーター』

製作/1957年
監督/ルイ・マル
原作/ノエル・カレフ
脚本/ロジェ・ニミエ、ルイ・マル
出演/
モーリス・ロネ
ジャンヌ・モロー
ジョルジュ・プージュリー
ジャン・ヴァール

最近ジャズをよく聴きます。隔週火曜日発売のという雑誌(CD付)を購読しているからです。
第1回のマイルス・デイビスから始まって今は9回目のサラ・ヴォーンです。
ジャズにあまり詳しくもないのですが、マイルス・デイビスは知っていました。今回の『死刑台のエレベーター』は全編がマイルスのトランペットで奏でられます。

監督はルイ・マル、25歳でのデビュー作でした。マイルス・デイビスは編集されたラッシュ・フィルムを観ながら即興でこの素晴らしいテーマ曲など10曲を演奏したという伝説も残っています。

主演は僕の大好きなジャンヌ・モロー、F・トリュフォー監督の『突然、炎のごとく』でも主演を演じています。『太陽がいっぱい』のモーリス・ロネもいい味を出しています。時間の行き違いがサスペンスの大きな仕掛けなのですが、これが25歳の監督か!…というほど素晴らしい緊張感です。
もちろん、それを助けるのがマイルス・デイビスの音楽。お金が掛かっていなくても面白い作品が作れるという見本のような映画です。

『家族ゲーム』

製作/1983年
監督/森田芳光
原作/本間洋平
脚本/森田芳光
出演/
松田優作
伊丹十三
由紀さおり
宮川一朗太

日本で若い頃から才能を発揮した監督は何と言っても森田芳光監督でしょうか?
この作品には驚きました。主演は松田優作さん、宮川一朗太さん、故・伊丹十三さん、由紀さおりさん等々。
この作品までの松田優作さんはアクション・スターという捉え方だったように思えます。

しかし、この作品では表情をほとんど変えることなく淡々と、それでいて狂気を感じさす家庭教師を演じました。宮川一朗太さん演じる受験生とのやり取りなんかはほとんどコントなのですが…面白さと怖さがミックスされて目が離せません。
横に一列に並んでの食卓シーンは有名ですが、これは何だか<最後の晩餐>を想像させてくれます。

とにかく、おかしな映画です。何度も観ているのですが観始めると最後まで観てしまうのです。ラストシーンにヘリコプターの音が聞こえるのですが、『夕凪の街 桜の国』のラブホテルでのヘリコプターの音はこの作品から盗んでしまいました。

そうそう、この作品に音楽は一切ないのでした。確か、由紀さおりさんがレコードを掛けるシーンはあるのですが音は鳴らないのです。不思議な映画でした。

『ユージュアル・サスペクツ』

製作/1995年
監督/ブライアン・シンガー
脚本/クリストファー・マックァリー
出演/
ガブリエル・バーン
スティーヴン・ボールドウィン
チャズ・パルミンテリ
ケヴィン・スペイシー

ここの所、時間が出来てミステリー小説ばかり読んでいました。そこで今回はミステリー映画の傑作を紹介しようと思います。

ブライアン・シンガー作品です。
派手な映像・演出はありません、計算され尽くした脚本が素晴らしく、またそれを演じる俳優たちの芝居も良いのです。…俳優さん達の芝居を観る映画かも知れません。

この作品でケヴィン・スペイシーはアカデミー助演男優賞を受賞、アカデミー脚本賞も受賞しています。今はスターになりましたがベニチオ・デル・トロなども渋い役どころで出演しています。

僕は主人公を演じているガブリエル・バーンという俳優さんが大好きです。
色気があって受け身の芝居がとてもうまい俳優さんです。内容は詳しく書けません。…良い人が一人も出ない作品です。
僕は自分の作品に悪い人を出したくないといつも思っているのですが、良い人が一人も出ないというのも珍しいですね。殺戮シーンなどもありますが、とにかく悪い人しか登場しないので、それほど辛く感じません。

構成が複雑なので一つのシーン、一つのカット、一つのセリフを注意深く鑑賞してください。ラストにハッとさせられて、思わずニヤリとするでしょう。

『影の車』

製作/1970年
監督/野村芳太郎
原作/松本清張
脚本/橋本忍
出演/
加藤剛
岩下志麻
小川真由美
岩崎加根子

ちょっと古い作品です。またかと思われるかも知れませんが野村芳太郎監督作品です。

原作は松本清張の短篇小説です。
加藤剛さんと岩下志麻さんが主演で、出ずっぱりです。他には岩下志麻さんの子供役の子役、大人達が少々、出演するだけなのですが、観ているうちにどんどん怖くなります。

派手な殺戮シーンがたくさんあるわけではありません。主人公の加藤剛さんの心理が追いつめられていく様が怖いのです。自分たちが生活しているちょっとした場面と重なるようなシーンがたくさんあるように思えます。カメラワークも複雑なことは一切やっていません。おそらくフィルターワークで効果を狙っている夕方の色彩が強烈に印象を残してくれています。
本来は暖か感じの表現に使用する夕方のオレンジ色が、この作品では寂しさ故に怖さまでも表現しているように感じるのです。原作の「潜在光景」というタイトルも改めてゾクッとします。

以前にも書きましたが野村芳太郎監督には、まだまだたくさんのミステリー映画があります。どうぞ、これを機会に野村作品を手にしてください。<野村芳太郎作品にハズレなし!>と思って貰えると思います。

『さらば、わが愛/覇王別姫』

製作/1993年
監督/チェン・カイコー
原作/リー・ピクワー
脚本/リー・ピクワー
出演/
レスリー・チャン
チャン・フォンイー
コン・リー
グォ・ヨウ

先日公開中の『王妃の紋章』という中国映画を観に行きました。とにかく豪華絢爛、CG満載、お金と人の物量戦の映画で、もうお腹一杯といった感じでした。でも、主演女優コン・リーの美しさにはうっとりでした。他の俳優さんとは格が違うというか凄い迫力でした。しかし僕は『さらば、わが愛/覇王別姫』のコン・リーが一番好きです。

監督はチェン・カイコー。
中国・京劇の<覇王別姫>という演目を大きな要素に、二人の女性(正確には一人は女形)と一人の男性の愛憎の物語。背景には中国文化大革命という歴史のうねりが、この人間ドラマをより深いものにしています。

主演の三人(チャン・フォンイー、レスリー・チャン、コン・リー)が素晴らしいです。ことに女形を演じるレスリー・チャンはその立ち振る舞いから、感情の表現まで絶品だと思います。本当に惜しい俳優さんを失ったと思います。レスリー・チャンは数年前に自殺しました。 もちろん、コン・リーの毅然としたキャラクターも彼女にはピッタリと嵌っていました。

この作品のもう一つの見所は、この三人の俳優たちが登場するまでの冒頭部分です。
京劇の養成施設での子役たちのお芝居。映像もひっくるめて、ぐいぐいとこの映画の世界に引き込まれます。
2時間40分という長尺の作品ですが、まったく長さを感じません。丁寧に撮られた映像…CGもない俳優の力強さを感じて貰える作品です。

『さらば愛しのやくざ』

製作/1990年
監督/和泉聖治
原作/安楽隆雄
脚本/野沢尚
出演/
陣内孝則
柳葉敏郎
相楽晴子
室田日出男

<さらば>繋がりでもありませんが日本映画はこれにしました。間もなく公開される『相棒』の和泉聖治監督作品です。
因みに僕もセカンド助監督として参加しています。

この一年『三本木農業高校、馬術部』でご一緒した柳葉敏郎さんと陣内孝則さんが主演です。トレンディ・ドラマが全盛の頃の作品ですから、このお二人の人気も凄いものがありました。早稲田大学・構内での撮影でも、たくさんの学生さんがボランティア・エキストラで参加もしてくれた記憶があります。

タイトルには<やくざ>の文字が入っていますが、紛れもなく青春映画です。陣内さん演じるヤクザと柳葉さん演じる早稲田の学生の奇妙な友情の物語でもあります。土派手なヤクザの抗争アクションなどもありませんが、舞台背景となった80年代の空気やファッションなどもよく出ていると思います。
それから、当時<ランバダ>という南米のダンス曲が大ヒットしていました。僕がよく聞いていたのを和泉監督が聞いて、この映画はランバダで行くぞ!…てなことになり、テーマ曲はランバダをフューチャーした感じのものになりました。ちょっと切なくて良いです。

SMAPの稲垣吾郎君が無口な少年の役で出演しています。けっこうレアですよね。
先月紹介した『旅の贈り物 0:00発』の原田昌樹監督がチーフ助監督、佐々部組には欠かせないスクリプターの山下千鶴ちゃんと初めて仕事をしたのもこの作品でした。

『旅の贈り物 0:00発』

製作/2006年
監督/原田昌樹
脚本/篠原高志
出演/
櫻井淳子
多岐川華子
徳永英明
大平シロー

去る2月28日に逝去された原田昌樹監督の作品です。まだ52歳という若さでした。原田監督には助監督時代に本当にお世話になりました。チーフ助監督の仕事を一から教わったのも原田監督でした。また原田監督作品『最後の馬券師』『喧嘩ラーメン』ではチーフ助監督も担当させていただきました。

この『旅の贈り物 0:00発』はJR西日本が製作母体となった作品です。一歩間違うと企業PRっぽい作品になりがちなのですが、原田監督はしっかりと人間ドラマに仕上げています。冒頭に列車内のシーンがあるのですが、ここはキッチリと鉄道ファンも意識しながら丁寧に<列車>と<人物>の紹介を撮っています。

そして、物語の核になる<風町>。このロケーションも素晴らしいです。ここに辿り着く5人の男女と町の人々のドラマが徐々に爽やかな感動を与えてくれます。徳永英明さんのちょっぴり素人っぽいお芝居がうまく嵌っています。この作品を見終わると何だか旅に出たくなりました。それもブルー・トレインに乗ってゆっくりと…。そう思わせることがこの映画のテーマだと思います。そして、そう思った僕はすっかりこの映画に世界に嵌ったのだ思います。

TVドラマの劇場版などが大量宣伝で拡大公開され、『旅の贈り物 0:00発』のようにオリジナル脚本の素晴らしい作品が小さな公開、いつもながら今の日本映画界の現状に不満を感じます。
原田昌樹監督のご冥福をお祈り致します。

『フォロー・ミー』

製作/1972年
監督/キャロル・リード
原作/ピーター・シェーファー
脚本/ピーター・シェーファー
出演/
ミア・ファロー
トポル
マイケル・ジェイストン
マーガレット・ローリングス

こちらは原田昌樹監督と飲んだりした時によく話していた映画です。僕も原田監督も大好きな作品です。

大きな仕掛けなど何もない作品です。妻の不倫を疑った亭主が探偵に調査を依頼する。妻役にミア・ファロー、探偵役にトポル。この二人のお芝居が素晴らしいのです。ミア・ファローは『ローズマリーの赤ちゃん』が有名ですが、この映画では淡々と演じる<様>が良いです。トポルは『屋根の上のバイオリン弾き』が代表作ですが、僕はこの作品のトポルが一番好きです。

とてもシンプルなストーリーの小品ですが、何年経っても色褪せない作品ってあります。この作品はまさにそういう作品だと思います。つい思い出して観たくなります。ホントに単純なお話でストーリーを書くとネタバレになるので、ここでは詳しく書けません。未見でしたら、是非ご覧になってください。『旅の贈り物 0:00発』と同じように、観たあとに爽やかなで何とも温かい気持ちになるでしょう。そして、この作品の監督は、何と『第三の男』のキャロル・リード監督というのも驚きです。今回は原田昌樹監督の追悼になってしまいました。

『若者のすべて』

製作/1960年
監督/ルキノ・ヴィスコンティ
原作/ジョヴァンニ・テストーリ
脚本/ルキノ・ヴィスコンティ、スーゾ・チェッキ・ダミーコ、パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ、マッシモ・フランチオーザ、エンリコ・メディオーリ
出演/
アラン・ドロン
レナート・サルヴァトーリ
アニー・ジラルド

『結婚しようよ』が公開中です。ずっとホームドラマをやりたくて、少々ベタですが、R−45を意識するとそんなベタさも悪くないかと…。そんなわけで、今回は家族の話をテーマに選びました。

ルキノ・ヴィスコンティ監督の名作です。主演は以前紹介したアラン・ドロン。他にはクラウディア・カルディナーレやアニー・ジラルドといった名女優も名を連ねます。

父親を亡くした家族がイタリア南部の田舎からミラノという都会へと出てきます。男ばかりの5人兄弟が母親を支えながら、仕事を得るために奮闘します。しかし経済的に不安定な当時のイタリア社会では小さな仕事すらなかなか手に入りません。

アラン・ドロン扮する三男のロッコがボクシングの才能を見せ、家族を支えるのですが、次男がヤクザになっていくなどして家族はなかなか一つになりません。結果的には家族の悲劇を扱った作品ですが、僕はラストシーンに微かな救いを見出すことが出来ました。3時間近い、一大叙事詩のような映画です。徹底したリアリズムが切迫感を生み出します。

かつて、日本のTVドラマに同じタイトルがあったように思います。このタイトルを付けるなんて勇気あるなぁって思ったことを記憶しています。

『家族』

製作/1970年
監督/山田洋次
原作/山田洋次
脚本/山田洋次、宮崎晃
出演/
倍賞千恵子
井川比佐志
笠智衆
前田吟

こちらはタイトルがまさに<家族>です。山田洋次監督の名作です。 長崎の小島の家族が、故郷を捨てて北海道まで移動していくロードムービーです。

倍賞千恵子さんと井川比佐志さんが夫婦を、そしておじいちゃんを笠知衆さんが演じています。

貧しい家族が新しい夢を見ながら北海道を目指すのですが、途中に娘が病気で死んでしまったり、老いた父親を兄弟のどちらが面倒を見るか、などの家族のテーマを語っていきます。

また製作時に日本では大阪万国博覧会が開催中で、劇中の家族も入場するのですが、あまりの混雑にすぐに退場します。山田洋次監督は小さな家族を描きながら、高度成長時の日本が抱える社会的な問題も提示しながら、丁寧に人物たちも描写していきます。

僕は大学生の頃にこの作品を観たのですが、もちろん感動もしたのですが、何とも言えない怒りも感じながら鑑賞しました。
ジョン・フォード監督が撮った『怒りの葡萄』というアメリカ映画があります。主演はヘンリー・フォンダで、こちらも家族のロードムービーだったように記憶しています。見比べるのも面白いかと思います。

『ロッキー・ザ・ファイナル』

製作/2006年
監督/シルヴェスター・スタローン
原作/シルヴェスター・スタローン
出演/
シルヴェスター・スタローン
バート・ヤング
アントニオ・ターヴァー
ジェラルディン・ヒューズ

映画には<感心>させられる映画と<感動>させられる映画があると思います。

さしずめ映画賞などをたくさん受賞する映画は、批評家の皆さんが感心する映画かなと思います。今回の『ロッキー・ザ・ファイナル』その反対、凄く感動させられました。

最初の『ロッキー』を観たのは大学2年生の頃。とにかく涙が溢れて、ラストのエイドリアンとの抱擁は名シーンでした。毎朝、サントラ盤をかけて、一日の始めを元気にスタートしていました。

パート2以降は派手になるばかりで、内容にはがっかりさせられていたのですが、今回は嵌ってしまいました。ストーリーや細かいシチュエーションも最初の頃とほとんど同じ…。
水槽の亀、生卵のまる飲み、フィラデルフィアのランニング、エイドリアンの替わりも、再びあまり美人でない女優さんを配し、とにかく何から何までがベタな作りです。でも後半、あのテーマ曲が流れて、同じシチュエーションが進行すると、条件反射のように涙が流れ始めました。DVDでの鑑賞だったのですが、家人に顔を見られないようにするのに苦労しました。

やっぱり映画はこうでなければ…。ベタと言われようが、<感心>される映画よりも<感動>される映画の作り手でいたいと改めて思う一作でした。

『ストリート・オブ・ファイアー』

製作/1984年
監督/ウォルター・ヒル
脚本/ウォルター・ヒル、ラリー・グロス
出演/
マイケル・パレ
ダイアン・レイン
ウィレム・デフォー
リック・モラニス

いよいよ『結婚しようよ』が公開されます。
そこで音楽をたっぷりと聴かせる音楽映画をと思ったのですが、日本映画では思い浮かばないので『ストリート・オブ・ファイアー』にしました。

マイケル・ペレという無名俳優が主人公でしたが、公開時はあまりヒットしなかった作品です。僕はヒロインのダイアン・レインを目当てに観に行きました。

『リトル・ロマンス』で一躍スターになった女優です。当時は女優というよりは子役かも?
オープニングからワクワクドキドキの作品でした。とにかく編集のリズムが素晴らしいのです。フィーチャーされる音楽もカッコイイ曲ばかり!ダイアン・レインもセクシーで、レイベンという悪役をやったウィリアム・デフォーも凄い存在感でした。

この作品以降、ウィリアム・デフォーは『プラトーン』や『ミシシッピー・バーニング』でスターダムを駆け上がります。主役のマイケル・ペレだけが、以降はパッとしませんでした。

エンディングで唄うダイアン・レインの曲を僕自身の結婚式の披露宴のオープニング曲にしたことを思い出しました。

ウォルター・ヒル監督には『ザ・ドライバー』という名作もあります。こちらもカー・アクションが素晴らしくて、編集が上手いです。

『しゃべれどもしゃべれども』

製作/2007年
監督/平山秀幸
原作/佐藤多佳子
脚本/奥寺佐渡子
出演/
国分太一
香里奈
森永悠希
松重豊

一年を振り返って今年一番好きだった映画を選びました。落語家(二つ目)のお話です。気持ち良かったのは、この映画の距離感です。作り手(演出)と俳優との距離、キャラクター同志の距離、これらが絶妙に僕の好みに合いました。
国分太一さんが素晴らしかったです。あまり力が入らず、それでいて最後の舞台での落語、僕はあまり落語を聞いたことがありませんが、このシーンの落語は素晴らしかった。相当に稽古を積んだんだろうと思いました。子役とヒロインのお芝居が心もとない箇所もいくつかありましたが…。
優しさに満ちた作品だと思います。寄席のシーンや伊東四朗さん演じる師匠の家などの描き方、殊に師匠の女将さんの扱いなど…、ホントに良い距離感なのです。
いろんな映画賞が発表になっていますが、僕は国分太一さんに主演男優賞をあげたいと思いました。
ずいぶん前に森田芳光監督が『の・ようなもの』という映画を撮っています。
こちらも落語家の卵たちが主人公の映画です。見比べてみるのも面白いと思います。平山秀幸監督と森田芳光監督の人となりも少し見られるように思えるのです。

『ゾディアック』

製作/2006年
監督/デヴィッド・フィンチャー
原作/ロバート・グレイスミス
脚本/ジェームズ・ヴァンダービルト
出演/
ジェイク・ギレンホール
マーク・ラファロ
ロバート・ダウニー・Jr
アンソニー・エドワーズ

外国映画は以前紹介した『ドリームガールズ』がダントツの一番でしたが…。
こちらも面白かったです。韓国映画『殺人の追憶』も未解決事件が素材でしたが、この映画も実際に起きた連続殺人事件が素材になっています。
デビッド・フィンチャー監督は『セブン』で素晴らしい緊張感のサスペンス映画を見せてくれましたが、こちらもなかなかのものです。ちょっぴりユーモアを交えての語り口は『セブン』のただただ陰湿な感じと少々違います。そのユーモアが入った分、『セブン』よりも評価を落としているのかも知れませんが、僕は逆に登場人物にメリハリがついて良かったように思えました。追うべき相手がきっちり見えないイライラも含め、楽しめました。
不満は20数年にも渡るお話をあまりに大胆にすっ飛ばす所。<時間の飛ばし>は映画のモンタージュの醍醐味ではありますが、それにしても粗っぽい感じを受けました。
どうぞ、『セブン』と合わせてご覧ください。

『太陽を盗んだ男』

製作/1979年
監督/長谷川和彦
原案/レナード・シュレイダー
脚本/長谷川和彦、レナード・シュレイダー
出演/
沢田研二
菅原文太
池上季実子
北村和夫

年の瀬になるといろんな映画賞が発表になります。30年以上前に『青春の殺人者』という作品が数々の映画賞を受賞しました。そのデビュー作の監督は長谷川和彦監督。
その2年後に発表されたのが『太陽を盗んだ男』です。主演は沢田研二、当時、歌手として人気は頂点でした。その沢田研二が原子爆弾を作って日本政府と対決するという荒唐無稽なお話ですが、緻密に練られた脚本に2時間余りの上映時間は飽きることなく、惹きつけられました。刑事役の菅原文太さんも熱演です。当時、僕たちは8ミリフィルムによる学生映画を作っていたのですが、この2作品で、長谷川和彦監督は僕たちの憧れの監督になりました。
当然、『太陽を盗んだ男』もその年の映画賞をたくさん獲得しました。デビュー作もデビュー2作目も共に<キネマ旬報>のベスト1を獲得した監督なんていないのではないでしょうか?映画音楽のセンスも素晴らしいです。残念なのは、その2作以降、長谷川和彦監督は1本も映画を撮っていないということ。あんなに素晴らしい才能を30年も封印しているのは日本映画界にとって大きな損失だと思います。

『明日に向かって撃て!』

製作/1969年
監督/ジョージ・ロイ・ヒル
脚本/ウィリアム・ゴールドマン
出演/
ポール・ニューマン
ロバート・レッドフォード
キャサリン・ロス
ストローザー・マーティン

9月に『荒野の1ドル銀貨』というマカロニ・ウエスタンを紹介しました。今回はアメリカ製の西部劇、しかし正統的な西部劇ではありません。アメリカン・ニューシネマと呼ばれた時代の西部劇です。嘗ての西部劇は、インディアンを悪者として描きながら拳銃の撃ち合いのアクションを楽しむといった感じで、日本の時代劇と同じように分かり易いストーリーの作品がほとんどでした。『明日に向かって撃て!』は、西部劇の時代を描きながら、男二人の友情や一人のヒロインを巡る恋愛、そして若者が描く夢…その時代に普遍に存在することを繊細に描いていました。それでもって、ガン・アクションも迫力のあるシーンとしてしっかり描かれています。B・J・トーマスの歌う主題歌<雨にぬれても>はスタンダード・ナンバーになっています。主演のロバート・レッドフォード、ポール・ニューマン、キャサリン・ロスの三人は大好きなスターですが、ことにポール・ニューマンに嵌ってしまいました。ポール・ニューマンは『ハスラー2』でアカデミー賞の主演男優賞を獲得しましたが、本来ならこの作品か『スティング』が妥当だったのではないでしょうか?

『Aサインデイズ』

製作/1989年
監督/崔洋一
原案/利根川裕
脚本/斎藤博、崔洋一
出演/
中川安奈
石橋凌
広田レオナ
中尾ミエ

今月から『結婚しようよ』のマスコミ向けの試写会が始まりました。不安と期待でドキドキです。ということで今回は音楽映画です。
この作品は沖縄のミュージシャン、喜屋武マリーを描いた作品です。僕も助監督として参加した作品です。毎日深夜まで大変過酷な撮影でしたが、とても楽しい撮影でもありました。
石橋凌さんが初主演で「敦厚」で華々しいデビューを飾った中川安奈さんが相手役でした。作品を観れば判りますが、ライブシーンなどがホントに活き活きと撮れて、臨場感もたっぷりです。

沖縄という風土もしっかりと画面からは感じてもらえると思います。残念ながら、小さな公開でしたからたくさんの方に観てもらえた作品とは言えませんが、僕の中では崔洋一監督のベスト作品だと思っています。
<Aサイン>の意味などもとても興味深いですが、それは映画をご覧になって知ってください。ラストのライブハウスのシーンでは、僕もロン毛のカツラを付けて出演しています…。

『ザ・コミットメンツ』

製作/1991年
監督/アラン・パーカー
原作/ロディ・ドイル
脚本/ディック・クレメント、イアン・ラ・フレネ、ロディ・ドイル
出演/
ロバート・アーキンズ
マイケル・エイハーン
アンジェリナ・ボール
マリア・ドイル

こちらはイギリス映画です。
著名なスターはまったく出ていません。でも映画に力があればスターなんて
<そんなの関係ねぇ!>ですね。
ちょっぴり本木雅弘さんと吉岡秀隆さんが主演した『ラストソング』に似ています。
もちろんこちらの作品のほうが先ですが…。とにかく主人公になるバンドが力強くて…それでいて楽しいんです。
前々回に紹介した『ドリームガールズ』などもそうですが、こういう音楽映画は大きなスクリーンで大きな音響で観たい(感じたい)ものですね。
ハリウッド映画とはまた一味違った感覚のイギリス映画を楽しんでもらえればと思います。アラン・パーカー監督は『フェーム』もそうでしたが、群像劇を扱うと巧いです。特に編集が素晴らしい、つまりは映画を良く知っているということです。
『結婚しようよ』中ノ森BANDも迫力があって良いですよ…。

『荒野の1ドル銀貨』

製作/1965年
監督/カルヴィン・ジャクソン・パジェット(ジョルジオ・フェローニ)
脚本/カルヴィン・ジャクソン・パジェット、ジョージ・フィンリー
出演/
ジュリアーノ・ジェンマ
アイダ・ガリ
ピエール・クレソワ
ジュゼッペ・アドバッティ

今外国映画をテレビで見始めた中学生の頃、毎週のように放映されていたのが1960年代をピークに量産されていたマカロニ・ウエスタンと呼ばれたイタリア製の西部劇です。ちょっと前の香港映画みたいな感じで何でもありの西部劇です。
黒澤明監督の『用心棒』を完全にパクって作られたのが『荒野の用心棒』、主演は当時無名のクリント・イーストウッド。
今、公開されているス○ヤ○・ウエスタンの元ネタは『続・荒野の用心棒』ですね。こちらの主演はフランコ・ネロ。
でも僕が好きだったのはジュリアーノ・ジェンマ。当時、映画雑誌ではアラン・ドロンと人気を二分していました。日本のテレビCMにもいくつか出演しました。
助監督の頃に一度イタリア・ロケでご一緒しました。
『フィレンツェの風に抱かれて』という作品です。この時、ジェンマさんは早撃ちの練習のやり方をコインを使って教えてくれました。本場の西部劇では『シェーン』のアラン・ラッドが一番早いけど、マカロニ・ウエスタンでは僕が一番早撃ちだとジェンマさんは言ってました。この映画も一枚のコインがキーワードの作品です。

『それでもボクはやってない』

製作/2006年
監督/周防正行
脚本/周防正行
出演/
加瀬亮
瀬戸朝香
役所広司
山本耕史

周防正行監督、11年ぶりの作品でした。スポーツ紙によると、米アカデミー賞・外国語作品賞の日本映画代表だそうです。
ドキュメンタリーを観ているような感じで、いつもの周防監督作品のような娯楽性が少ない作品でした。主演の人もあまり知らない人だったのでリアリティがありました。私的には最後の裁判官を演じた小日向文世さんが良かったです。自分があの法廷にいたら、あの裁判官に飛びかかってぶん殴ってしまったかも知れません(笑)。
『夕凪の街桜の国』も米アカデミー賞の日本映画代表にエントリーしていましたが選考されませんでした。原爆を落としたアメリカという国での上映も実現できたらと思っていたので残念です。
周防監督はアメリカでは『Shallweダンス?』がリメイクされて有名ですし、痴漢という犯罪も日本的でアメリカでは目を惹くのかも知れません。でも、やはり被爆という世界的に大きな出来事を土俵に乗せて欲しかったと思いました。

『エルビス・オン・ステージ』

製作/1970年
監督/デニス・サンダース
出演/
エルヴィス・プレスリー
ジェームズ・バートン
チャーリー・ホッジ

今年の夏で、エルビス・プレスリーが亡くなってちょうど30年です。僕はこの映画を観てプレスリーが大好きになりました。初めて買った外国のアーチストのレコードもこの作品のサントラ盤でした。擦りきれるほど聴きましたが特に好きな曲が「この胸のときめきを」でした。
中学時代の音楽の授業で、好きな曲をアカペラで唄うというテストがあったのですが、僕はこの曲をプレスリーの振り付きで唄ったのを覚えています。先生や同級生から失笑を買いましたがすっかり自己満足で気持ちよかったです。
他にもトム・ジョーンズやエンゲルベルト・フンパーディンクといった男性ヴォーカルのアーチストも大好きでした。
因みに僕はエルビス・プレスリーと誕生日が一緒なので、それも嬉しかった訳です。そうそう、デビッド・ボウイも同じ誕生日です。日本人では小泉純一郎元総理も一緒です。衛星中継された<プレスリー・イン・ハワイ>も大好きです。

『エレキの若大将』

製作/1965年
監督/岩内克己
脚本/田波靖男
出演/
加山雄三
星由里子
田中邦衛
有島一郎

こちらは日本で大好きだった加山雄三さん主演の若大将シリーズ第6作。シリーズで一番好きな作品です。
ノー天気なストーリーながら、ギターが弾けて、スポーツが出来て、女の子にもてまくる若大将。何もかもが憧れでした。加山雄三さんはもちろんですが、周りの俳優さん達もくせ者揃いで面白いです。有島一郎さん、飯田蝶子さんのお父さんとおばあちゃん。左ト全さんや上原謙さん達もシリーズに何度も登場します。星由里子さん演じる澄ちゃんも魅力でした。でも何と言っても<青大将>の田中邦衛さんが最高でした。
「北の国から」の助監督をやっていたとき、時々このシリーズのお話も聞かせていただきましたが、田中邦衛さんご自身はあまりこの役が好きではなかったようです。

加山雄三さんは今年70歳だそうですが、いまでもカッコよくエレキ・ギターを弾いて唄います。文字通り永遠の若大将ですね。因みに『カーテンコール』は最初の脚本では若大将シリーズで綴ろうと思っていました。主題歌も<いつでも夢を>ではなく、<君といつまでも>でした…。東宝からフィルムを貸して貰えずに断念した次第です。

『ドリームガールズ』

製作/2006年
監督/ビル・コンドン
原作/トム・アイン
脚本/ビル・コンドン
出演/
ジェイミー・フォックス
ビヨンセ・ノウルズ
エディ・マーフィ
ジェニファー・ハドソン

『夕凪の街桜の国』のキャンペーンが続いています。今月はお休みを…とも思ったりしたのですが、どうしてもこの作品を書きたかったです。
以前に『ウエスト・サイド物語』のことを書きましたが、本当にそれ以来の感動ミュージカルでした。ダイアナ・ロスがいたシュープリームスを思わせるドリームガールズの成功と挫折を描いた青春映画です。複雑な話はありません。彼女たちの唄と踊りに圧倒されました。ジェニファー・ハドソンという女優さんがアカデミー助演女優賞を獲ったそうです。でも、僕はビヨンセが良かったです。ジェニファー・ハドソンは大きな波のある役どころで、役得です。芝居もややオーバーアクトで、やはりアメリカの映画人も少々デフォルメ気味の芝居が好きなのかなと感じました。マネージャーの役をやったジェイミー・フォックスも良かったです。

とにかく彼女たちのパフォーマンスを楽しんでください。DVD鑑賞だったのですがスクリーンで観たかった…。

『シェルブールの雨傘』

製作/1964年
監督/ジャック・ドゥミ
脚本/ジャック・ドゥミ
出演/
カトリーヌ・ドヌーヴ
ニーノ・カステルヌオーヴォ
マルク・ミシェル
エレン・ファルナー

今回は洋画2本にさせてください。ミュージカルで日本映画が思い浮かばなかった。
『ドリームガールズ』に比べると古臭さを感じるかも知れません。でも、先日TVで放映されているのを観ていたら、結局最後まで観てしまいました。ミシェル・ルグランの切ない音楽…、カトリーヌ・ドヌーヴの美しさ、それだけでも観る価値ありです。

セリフが全編音楽に乗せて…というのが、馴れていない日本人には辛いかも知れませんが、一度体感してみるのも良いのではと思います。でもフランス語だからいいのかな…。日本語を音楽に乗せて、♪
僕は君を愛してるぅ〜なんて映画は吹きだしてしまうかも知れません。
僕はギリギリのミュージカルに挑戦したくて『チルソクの夏』にトライしました。

『樹の海』

製作/2004年
監督/瀧本智行
脚本/青島武、瀧本智行
出演/
萩原聖人
井川遥
池内博之
津田寛治

瀧本智行監督の第1回監督作品です。
瀧本監督は僕と一緒に『鉄道員(ぽっぽや)』
などの作品の助監督をやり、また『陽はまた昇る』『チルソクの夏』のチーフ助監督もやってもらいました。まもなく第2回監督作品、サスペンス映画の『犯人に告ぐ』がWOWOWでOAされた後、劇場公開されます。
この『樹の海』は、富士の樹海で自殺しようとする数人の男女のオムニバス映画です。自殺をモチーフにしながら、映画の大きなテーマは<生きるってちょっといいぞ!ってことを語ってくれます。津田寛治さん、井川遥さん達の俳優陣が皆、素晴らしいです。それはつまり瀧本監督の演出がしっかりとしているということです。
よく映画評論家の方々がこの俳優の演技は素晴らしいとか、あの俳優の芝居が作品を支えてる、なんてことを言いますが、その演技を引き出すのが演出だと思います。『樹の海』での瀧本監督の演出はとても新人とは思えない、確かなお芝居を引き出していると思います。
また、脚本もよく練られています。共同で書かれたのは青島武氏。こちらは、助監督時代からの戦友です。今、新しい脚本作りを念願叶って青島氏とやっています。

『殺しのドレス』

製作/1980年
監督/ブライアン・デ・パルマ
脚本/ブライアン・デ・パルマ
出演/
マイケル・ケイン
ナンシー・アレン
アンジー・ディッキンソン
キース・ゴードン

こちらはサスペンス。このコーナーでは『キャリー』を紹介したブライアン・デ・パルマ監督の名作です。
映画が始まって最初の事件が起きるまでの30分余りはほとんどセリフも無く、映像と音楽とで魅せます。ことに美術館からタクシー、そして行きずりの男性のマンションに行くまでは、人妻という立場での心の揺れが、カメラの揺れと音楽の揺れとに見事にシンクロします。
アンジー・ディッキンソンというスター女優を使いながら、映画の冒頭で死なせてしまう。これはヒッチコックの『サイコ』へのリスペクト。映画の構造も『サイコ』に似ています。何だかこうして書いているとまた観たくなってきました。
途中から主人公になるナンシー・アレンという女優さんはデ・パルマ監督夫人になった人です。コケティッシュで何とも可愛い女優さんで、僕は大好きだったのですがあまり大成しませんでした。『ロボコップ』の婦人警官が印象に残っているくらいです。
今もデ・パルマ夫人なのかなぁ…。
昨年公開の『ブラック・ダリア』は少々がっかりしました。

『情婦』

製作/1957年
監督/ビリー・ワイルダー
原作:/アガサ・クリスティ
脚本/ビリー・ワイルダー、ハリー・カーニッツ
出演/
タイロン・パワー
マレーネ・ディートリッヒ
チャールズ・ロートン
エルザ・ランチェスター

僕は法廷物の映画が大好きです。法廷が舞台になるだけでプラス20点くらいからスタートします。この作品はアガサ・クリスティの「検察側の証人」が原作です。『情婦』、粋なタイトルです。今は横文字をそのままタイトルにしてしまってますが、かつての洋画はこんな所に頭をひねって素敵なタイトルを付けていました。主役ではありませんが、マレーネ・ディートリッヒが登場してから全てを惹き付けます。凄い女優さんです。
最後にどんでん返しがあるのでストーリーに触れられませんが、監督はビリー・ワイルダーです。それだけで安心して観られると思います。いつかご紹介したいと思いますが、同監督の『サンセット大通り』も名作です。他にも法廷を扱った作品には『十二人の怒れる男』や『アラバマ物語』などたくさんの名作があります。

『事件』

製作/1978年
監督/野村芳太郎
原作:/大岡昇平
脚本/新藤兼人
出演/
松坂慶子
大竹しのぶ
永島敏行
渡瀬恒彦

こちらも『砂の器』の時に少し触れた僕の大好きな野村芳太郎監督作品です。数ある法廷物の中で、一番好きな作品です。『半落ち』の法廷シーンを、贅沢なセットを組んで撮影したのも、僕の<法廷物好き>によるからです。法廷では特殊な装置を置くことが出来ずに、ただただ人の様しか描くことが出来ません。だから興味深いのだと思うのです。それ故に俳優さんの力、演出の力も試されるように思います。『事件』では俳優さんが皆素晴らしいです。もちろん野村監督の引き出す力だとも言えます。まず渡瀬恒彦さんが良いです。最近はテレビドラマ中心に仕事をされてますが、是非映画に出演して欲しいです。そして、松坂慶子さんの妖しさ、美しさ。それに対比される大竹しのぶさんの清廉さ。その大竹さんのラストカットの歩く様にぞっとさせられます。こちらもあまり内容を書けませんね。

『優駿』

製作/1988年
監督/杉田成道
原作:/宮本輝
脚本/池端俊策
出演/
斉藤由貴
緒形直人
吉岡秀隆
加賀まりこ

いよいよ今週末に『三本木農業高校、馬術部』がクランクインします。どうぞ、<さんのう、ばじゅつぶ>と呼んでください。タカラコスモスと女子部員のふれあいの中で若者たちが成長していく姿を描こうと思います。ちょっと『チルソクの夏』の時の準備合宿を思い出します。
こちら『優駿』は競走馬の世界を描いた作品です。この作品で僕は助監督を担当していました。宮本輝さんの壮大な原作を2時間の映画にまとめるのは大変だったように記憶しています。それでも四季を通じて馬を丁寧に撮ってあります。僕はオラシオンという馬の世話を中心に参加したのですが、今回はその時の経験を活かせればと思います。先日、見直したのですが、ラストの競馬場・地下通路のクライマックス・シーンにエキストラに扮してチョロチョロしている自分の姿に失笑してしまいました。

『荒野の七人』

製作/1960年
監督/ジョン・スタージェス
原作:/黒澤明、橋本忍、小国英雄
脚本/ウィリアム・ロバーツ、ウォルター・バーンスタイン
出演/
ユル・ブリンナー
スティーヴ・マックィーン
チャールズ・ブロンソン
ジェームズ・コバーン

洋画も馬の世界のお話をと思ったのですが、長渕文音さんたち生徒役の俳優の練習に四苦八苦する姿を見ていると、この作品のユル・ブリンナーやスティーブ・マクィーン、チャールズ・ブロンソン等のスターたちを思い出しました。
つくづく嘗てのハリウッドのスターはきっちりと技術を習得して演技に入っているのだと思います。この作品での7人の乗馬のシーンは圧巻ですし、イーライ・ウォーラック演ずる盗賊たちの乗馬も上手いです。
ご存知のようにこの作品は黒澤明監督の『七人の侍』のリメイク作品です。しかしながら、コンパクトにまとめた全体のスピード感は黒澤作品に勝るとも劣らぬ素晴らしさです。役柄を対比しながら2作品を見比べてみるのも面白いと思います。リバイバル公開時、下関の映画館に何度も通いました。サントラ盤もLPがなかったので、シングル・レコードで購入。今も保存しています。

『華麗なる一族』

製作/1974年
監督/山本薩夫
原作:/山崎豊子
脚本/山田信夫
出演/
佐分利信
月丘夢路
仲代達矢
山本陽子

木村拓哉さん主演のテレビドラマが話題ですが、僕にとっての『華麗なる一族』はこちらです。山本薩夫監督の社会派大作映画。山崎豊子さん原作の小説も緻密な取材の上に成り立っていますが、今の時代の社会のあり方とほとんどシンクロしてしまうのも凄いことです。主演の佐分利信さんの演技が怖いくらいに素晴らしいです。また鉄平を演じる仲代達矢さんも重厚です。とにかく脇役の至るところまでスターが配置されていて驚きです。テレビドラマでこの作品を知った若い方にも観て欲しい名作です。
山本薩夫監督は社会派の巨匠で、このほかにも『白い巨塔』(こちらは田宮二郎さんが素晴らしい)、『ああ、野麦峠』『不毛地帯』『金環食』など、数え上げたらきりがないくらいにたくさんの名作を撮っています。

余談ですが、佐々部組でチーフ助監督を担当してくれている山本亮君はこの山本薩夫監督のお孫さんに当たります。

『小さな恋のメロディ』

製作/1971年
監督/ワリス・フセイン
脚本/アラン・パーカー
出演/
ジャック・ワイルド
マーク・レスター
トレイシー・ハイド
シーラ・スティーフェル

先日、久しぶりにこの作品を見直しました。中学生の頃、ドキドキしながら一人で観に行った映画です。一瞬にしてトレイシー・ハイドのファンになってしまいました。女の子達はマーク・レスター派とジャック・ワイルド派に分かれたように思います。僕はちょっと不良の匂いのするジャック・ワイルドが好きでしたが、今観ると些か老けた中学生ですね(笑)。ラストのトロッコのシーンにやられました…どこまでも夢は繋がるようなシーンで映画史に残ると思います。
『結婚しようよ』の初号試写のあとに、拓郎さんの歌を唄いにカラオケに行ったのですが、同世代のスタッフがこの作品の主題歌ビージーズの「メロディ・フェア」を入れると、みんなで大合唱になりました。
この曲を聴くと甘酸っぱいものを感じるのは僕だけじゃないんだと…ちょっと嬉しくなって僕も唄いました。僕は「若葉のころ」という曲をバックにトレイシー・ハイドが金魚を持って歩くシーンも大好きです。

『蒲田行進曲』

製作/1982年
監督/深作欣二
原作:/つかこうへい
脚本/つかこうへい
出演/
松坂慶子
風間杜夫
平田満
高見知佳

つい先日、日本アカデミー賞の発表がありました。骨太の人間ドラマを期待する自分にとって今年の各賞は少し意外なことが多かったです。
日本アカデミー賞で思い出すのは『蒲田行進曲』です。つかこうへいさん原作の本はちょっぴりSM色のコメディーですが、深作欣二監督によるこの作品は素晴らしい人間ドラマでした。特に平田満さん演じるヤスには笑わされ、そして大いに泣かされました。
銀ちゃん=風間杜夫さん、小夏=松坂慶子さんも共に当たり役。この三人はそれぞれ、最優秀主演男優賞、最優秀助演男優賞、最優秀主演女優賞を受賞しています。
映画の中では銀ちゃんが主役で平田満さんのヤスは付き人の大部屋俳優ですが、アカデミー賞の主演男優は平田満さんでした。映画の世界に入った年のアカデミー賞だったのでよく覚えています。当時は、いつの日かあの壇上に上がってみたいと思ったものでした……。
『蒲田行進曲』は今でも時々観たくなります。そうそう、中村雅俊さんの主題歌<恋人も濡れる街角>の使いどころも松坂さんの美しさとリンクさせて絶品です。ホントに深作監督は上手い監督でした。

『終電車』

製作/1981年
監督/フランソワ・トリュフォー
脚本/フランソワ・トリュフォー、シュザンヌ・シフマン
出演/
カトリーヌ・ドヌーヴ
ジェラール・ドパルデュー
ジャン・ポワレ
ハインツ・ベンネント

昨年の暮れに久しぶりに観ました。フランソワ・トリュフォー作品です。第二次大戦下のフランスの舞台人たちを描いた作品です。ナチスが侵攻してくる厳しい社会情勢の中で、演劇という芸術を守るために闘う人々の話です。主演のカトリーヌ・ドヌーヴがとにかく美しいです。
僕が中学生の頃、フランスではアラン・ドロンと並ぶ大スターでした。もちろん彼女の主演作品は日本でも必ず封切られましたし、ヒットもしました。アラン・ドロンと共演した『リスボン特急』など忘れられません。
ドヌーヴはちょっと冷たい感じの整い過ぎた美人なので、若い頃には取っつき難さもあったりしたのですが、この『終電車』の頃から大好きになりました。この映画は彼女が紛れもなく主役です。知性ある演出家と若き共演者との間で、劇場主兼主演女優として揺れ動くという役どころを見事に演じています。
ラストには、ヒッチコックが大好きなトリュフォーらしいどんでん返しも用意されてます。大人の映画って感じです。
残念ですが、今の日本映画界ではこんな企画はなかなか通りません。ドヌーヴ主演の『インドシナ』は米アカデミー賞の外国語作品賞を受賞しています。

『グッドナイト&グッドラック』

製作/2005年
監督/ジョージ・クルーニー
脚本/ジョージ・クルーニー、
グラント・ヘスロヴ
出演/
デヴィッド・ストラザーン
ジョージ・クルーニー
ロバート・ダウニー・Jr
パトリシア・クラークソン

今回は2006年の私のベストシネマということで選びました。
ここ数年、C・イーストウッド監督作品が大いに評価され、また日本の映画評論家の方々も諸手を挙げての大絶賛ですが、僕はいつもラストにがっかりさせられます。『ミスティック・リバー』や『ミリオンダラー・ベビー』は陰惨すぎます。勇気や希望を与えて貰えないのです。
同じ俳優監督でも、このG・クルーニー監督作品は素晴らしかったです。93分というコンパクトな人間ドラマの中に<赤狩り>や<テレビへの批判>など社会性のあるテーマをキッチリと詰め込んで、緊張感のあるドラマを見せてくれます。何よりも主人公の持つ強い信念に勇気を授かります。そして、時にフッとジャズを絶妙のタイミングで聴かせて一息つかせてもくれます。上手い!
日本の映画会社では、まず地味と言われて通りそうもない企画に果敢に挑戦したG・クルーニーに乾杯です。全編が白黒という手法も緊張感を高めるのに効果的でした。

『博士の愛した数式』

製作/2005年
監督/小泉堯史
原作/小川洋子
脚本/小泉堯史
出演/
寺尾聰
深津絵里
吉岡秀隆
浅丘ルリ子

日本映画はこちらです。もちろん『出口のない海』は除きます。
いろんな映画賞が発表になっています。残念ながらこの映画の主演女優・深津絵里さんが受賞しないのが不思議です。
彼女の淡々とした自然な演技が素晴らしかったです。映画評論家の方々が毎年選出する演技賞はデフォルメしたキャラクターが大芝居で泣いたり叫んだりするのが好みのようで、僕の好みのお芝居とは正反対です。
吉岡秀隆さんのルート君というキャラクターも素晴らしかったです。学生時代から数学が苦手だった僕も、つまずきそうになるとルート君の授業シーンが挿入されて、やさしく解説されます。この辺りの運びも絶妙で、自分が教室にいるような気分で映画を体感できました。80分で懸賞問題が解けるのかっていうツッコミ所もありますが……江夏豊投手(背番号28)で阪神タイガースのファンになった自分には、この設定にもやられました。

『柳生一族の陰謀』

製作/1978年
監督/深作欣二
脚本/野上龍雄、
松田寛夫、
深作欣二
出演/
萬屋錦之介
千葉真一
松方弘樹
西郷輝彦

『武士の一分』『大奥』とお正月映画が公開中ですね。山田洋次監督が『たそがれ清兵衛』を撮ったあたりから時代劇が多くなったような気がします。
僕の学生の頃は日本映画低迷期、特に時代劇はまったく当たらないと言われ、ほとんど製作されていませんでした。そんな時に果敢に挑戦したのが深作欣二監督で、この『柳生一族の陰謀』を撮りました。荒唐無稽なあらすじですがとにかく2時間半を一気に観せてくれます。
次から次に繰り出される仕掛けとアクションに圧倒されました。僕が大好きな故・成田三樹夫さんの演じる公家さんなど絶品です。今回、『結婚しようよ』に参加してくださった松方弘樹さんも重要な役柄で出演しています。ラストでの萬屋錦之介さんの有名なセリフ<夢でござる~>のキーになる役どころです。思えば、そんな大スターの松方弘樹さんに<ヨーイ、スタート!>を掛けることが出来る幸せを感じます。

『007/ロシアより愛をこめて』

製作/1963年
監督/テレンス・ヤング
原作/イアン・フレミング
脚本/リチャード・メイボーム
出演/
ショーン・コネリー
ダニエラ・ビアンキ
ペドロ・アルメンダリス
ロッテ・レーニャ

007シリーズも公開中です。僕が一番好きな0077がこの作品です。
何と言ってもジェームズ・ボンドが一番似合うのはショーン・コネリーではないでしょうか?今のジェームズ・ボンドが何代目かは分かりませんが……。
この作品はシリーズ中では一番地味(新兵器とかアクションが)なように思えます。でもその分、人間味がよく現れていてようにも思えます。
ちょっとしたユーモアもよく利いています。これもショーン・コネリーの上手さから伝わるのでしょうか。
ボンド・ガールのダニエラ・ビアンキも品があってきれいな女優さんです。最近のボンド・ガールって下品になってきたように思っていました。
ソフィー・マルソーは別ですが……そして何と言って主題歌。
マット・モンローの唄う同名の主題歌はシリーズ中の一番の名曲だと思います。僕は未だにカラオケで唄ってしまいます。

『アルゴ』

製作/2012年
監督/ベン・アフレック
原作/アントニオ・J・メンデス、
ジョシュア・ベアーマン
脚本/クリス・テリオ
出演/
ベン・アフレック
アラン・アーキン
ブライアン・クランストン
ジョン・グッドマン

ベン・アフレックは「グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち」で、俳優としても脚本家としても才能を実証済みでしたが、この作品は監督、そして製作者として素晴らしいです。もちろん俳優としても良かったですが…。
そしてさらに、プロデューサーとしてクレジットされているのがジョージ・クルーニー。
ジョージ・クルーニーは監督としても「グッドナイト&グッドラック」が素晴らしかったのですが、とにかく選択する題材に<志>の高さを感じます。予告編でクリント・イーストウッド作品が大々的に宣伝されていましたが、僕は断然ジョージ・クルーニーです。
この作品も劇場が少ないのが残念ですが、これから地方都市も廻っていくのではないかと思います。是非、ご覧ください。

『カッコーの巣の上で』

製作/1975年
監督/ミロス・フォアマン
原作/ケン・キージー
脚本/ボー・ゴールドマン、
ローレンス・ハウーベン
出演/
ジャック・ニコルソン
ルイーズ・フレッチャー
ダニー・デヴィート
ブラッド・ドゥーリフ

先月、東京国際映画祭で黒澤明賞を受賞したミロシュ・フォアマン監督の作品です。15年振りにミロシュ・フォアマン監督と会いました。実は15年前、日本で一緒に作品作りの準備をしました。ユーモア溢れる素敵な監督でした。
ミロシュ・フォアマンはこの作品で米・アカデミー賞の作品賞と監督賞を受賞しています。
精神病院が舞台のシリアスドラマですが、ミロシュ・フォアマンはこの作品をコメディと言っていました。ほかに『アマデウス』や『ラリー・フリント』等の作品も自分の作品はすべてコメディと言っていました。僕にはこの作品だけはコメディには思えなかったのですが……。ジャック・ニコルソンを初めとした患者たちは当然素晴らしいのですが、権力の象徴として描かれる、ルイーズ・フィッシャー扮する看護婦長の怖さに圧倒されます。ミロシュ・フォアマン作品はいつも権力に挑む人たちが主役です。
何度観てもラストシーンには涙が溢れます。音楽の使い方なども良いお手本です。

『デルス・ウザーラ』

製作/1975年
監督/黒澤明
原作/ウラジミール・アルセーニエフ
脚本/黒澤明、
ユーリー・ナギービン
出演/
ユーリー・サローミン
マキシム・ムンズク
シュメイクル・チョクモロフ
ウラジミール・クレメナ

厳密に言えば日本映画ではありませんが、黒澤明監督作品なので……
黒澤作品は『七人の侍』を筆頭に『用心棒』『椿三十郎』などのエンターテインメント作品が多く取り上げられます。でも一方僕は『生きる』などのヒューマニズム溢れる作品も大好きです。
この作品は、ロシアの地図作製のために調査隊が自然に挑むお話。その道案内をするのが森に住む猟師のデルス・ウザーラです。いわば文明と自然の対比を調査隊の隊長と猟師という図式で描くのですが、その背景になる自然の描写が素晴らしいです。天候に拘る黒澤監督らしく、いろんな条件を狙って撮っていると思いますがその粘りには感服です。
デルスの叫ぶ「カピターン!」(=隊長)という声に最後の方では感動させられます。
黒澤作品としては大ヒット作品ではなかったと思いますが、是非ご覧ください。

『キャリー』

製作/1976年
監督/ブライアン・デ・パルマ
原作/スティーヴン・キング
脚本/ローレンス・D・コーエン
出演/
シシー・スペイセク
ジョン・トラヴォルタ
パイパー・ローリー
エイミー・アーヴィング

『ブラック・ダリア』が公開中のブライアン・デ・パルマ監督の初期の作品です。
ホラー映画やスプラッター映画はあまり好きではありませんが、この『キャリー』は大好きな作品です。僕は映画学校の学生時代に一番好きな監督がブライアン・デ・パルマ監督でした。『殺しのドレス』や『アンタッチャブル』などはとてもスタイリッシュで、映像もサスペンスというよりは美しいと感じるほどでした。映画学校の卒業制作『スパークリング』は『キャリー』へのオマージュ作品で、学校の教室を血ノリだらけにした思い出があります。
この作品もホラー映画のジャンルですが、主人公・キャリーとその母親のあまりの切なさに映画館で涙を零してしまいました。ラストは思わず声を上げてしまいます。どうぞ一人で観てください。
ジョン・トラボルタ、ナンシー・アレン、ウィリアム・カットなど当時まだ無名だった俳優達を観るのも楽しみです。
ブライアン・デ・パルマ監督には他にも『愛のメモリー』というあまりヒットしなかった名作もあります。

『旅の重さ』

製作/1972年
監督/斎藤耕一
原作/素九鬼子
脚本/石森史郎
出演/
高橋洋子
岸田今日子
富山真沙子
田中筆子

まもなく映画『結婚しようよ』がクランクインします。この映画は全編に吉田拓郎さんの曲が流れる、吉田拓郎へのオマージュがテーマの作品です。ずっと学生の頃からこんな映画を撮りたいと思っていました。実は70年代に全編に吉田拓郎しか流れない映画があったのです。今回の『旅の重さ』がその作品です。オープニングは<今日までそして明日から>。映画音楽として流れるのは、拓郎さんの<恋の歌>という曲です。
高橋洋子さん演じる女子高生が家出をして、四国を旅するロードムービーですが、少しずつ周りの大人たちとのふれ合いのなかで、彼女自身が成長していくという青春映画です。高橋洋子さんも素晴らしいのですが、共演の大人たちも良いのです。
三国連太郎さんは今の佐藤浩市さんとそっくりなのは、思わずニヤリとしてしまいます。またほんの少しのシーンですが、秋吉久美子さんがこの作品でデビューしていて、本当に可憐です。
昨年やっとDVDになりました。是非ご覧ください。

『ゴッドファーザー』

製作/1972年
監督/フランシス・フォード・コッポラ
原作/マリオ・プーゾ
脚本/フランシス・フォード・コッポラ、
マリオ・プーゾ
出演/
マーロン・ブランド
アル・パチーノ
ジェームズ・カーン
リチャード・カステラーノ

『出口のない海』が良いスタートを切ることが出来ました。ありがとうございます。
さて、満を持してのこの作品です。壮大な家族のドラマ。Part2と合わせて観て欲しいです。派手なアクションシーンが公開時には話題になりましたが、僕は30歳を過ぎた頃からこの映画が大好きになりました。アル・パチーノとロバート・デ・ニーロがカッコいいと思っていたのですが、40歳も半ばを過ぎるとマーロン・ブランドに完全に感情移入してしまいます。
子供から見た親、親から見た子供、とにかくいろんなシーンで考えさせられます。高校生の頃に初めて観たときはチンプンカンプンだったはずです。自分が歳を重ねて観るたびに感じ方が変わってく映画……凄いです。いつか、こんな大河ドラマを自分も撮ってみたいと思います。これを撮った時、確かフランシス・フォード・コッポラは30代前半、凄い才能です。まさに天才ですね。
何とか生きているうちにこんな映画を作りたい……。

『砂の器』

製作/1974年
監督/野村芳太郎
原作/松本清張
脚本/橋本忍、山田洋次
出演/
丹波哲郎
森田健作
加藤剛
加藤嘉

こちらも満を持して……。脚本は山田洋次監督も参加されていて、監督は大好きな野村芳太郎監督です。いろんなことを想像させてくれる映画です。加藤嘉さんと加藤剛さんの父子がどんな心情でどんな旅をしたかなんて何も語られません。美しい映像と音楽が観客である僕にいろんな想像してしまいます。加藤剛さんと島田陽子さんがどんな馴れ初めで恋人になったかなんて何も説明してくれません。でも観客である僕は孤独な二人がどうやって恋人になったか、いろんな想像をさせてくれます。森田健作さんと丹波哲郎さん、刑事二人組のバックグランドの説明もありません。でも想像すると楽しいのです。
70年代~80年代の僕が好きな日本映画はとにかくいろんなことを想像させてくれました。考えさせてくれました。悲しいかな、今の日本映画はこの想像(余白)を作ると観客は中途半端だと、考えることを拒否します。映画評論家と名乗る人たちまでもが……。テレビドラマがあまりに説明過多で、それに慣れすぎたのでしょうか?
野村芳太郎作品は『事件』や『鬼畜』もいろんなことを考えさせてくれるのです。

『ジョニーは戦場に行った』

製作/1971年
監督/ダルトン・トランボ
原作/ダルトン・トランボ
脚本/ダルトン・トランボ
出演/
ティモシー・ボトムズ
キャシー・フィールズ
ドナルド・サザーランド
ジェイソン・ロバーズ

いよいよ『出口のない海』の公開が近づいてきました。そこで今回は戦争をテーマにした作品を選びました。
詳しい内容をここで書くのは避けようと思います。とにかく観て欲しい作品です。戦争とは、何と愚かであるということを静かに語ってくれます。監督ドルトン・トランボはこの作品がデビュー作です。とは言え、残した監督作品は後にも先にもこの作品だけです。しかも65歳でのデビュー作でした。元々は脚本家でしたが、レッド・バージによりハリウッドでは仕事が出来なくなりました。それでもいろいろな仮名で脚本を書き、『黒い牡牛』でアカデミー原案賞も受賞しています。その時も名乗り出なかったというのが逸話として残っています。『ジョニーは戦場に行った』は原作も自分で書いており、渾身の作品だったようです。
助監督を長くやっていた頃、ドルトン・トランボは自分にとって大いに励みになりました。とにかく自分の撮りたい作品を撮るためならデビューが60歳でも構わないと思っていました。
【追記】確か、『ローマの休日』も彼の脚本だったと思います。

『火垂るの墓』

製作/1988年
監督/高畑勲
原作/野坂昭如
脚本/高畑勲
出演/
辰巳努
白石綾乃
志乃原良子
山口朱美

野坂昭如さん原作のアニメ映画です。監督は高畑勳さん。
子供の声を大人が流暢に喋ったりするので、アニメはどちらかといえば苦手なのですが、涙を流して観た作品です。幼い兄妹の姿を通して、この作品も戦争の愚かさを強烈に伝えてくれます。
フランス映画『禁じられた遊び』がダブってきたりもしましたが、本当に辛い作品でした。子供たちに是非見せたい映画だと思います。
自分の撮影現場でもよく目にする<サクマ式ドロップ>、のど飴の代わりです。あの缶を見るといつも『火垂るの墓』を思い出して辛くなってしまいます。

『映画に愛をこめて アメリカの夜』

製作/1973年
監督/フランソワ・トリュフォー
脚本/フランソワ・トリュフォー、
ジャン・ルイ・リシャール、
シュザンヌ・シフマン
出演/
ジャクリーン・ビセット
ジャン・ピエール・オーモン
ヴァレンティナ・コルテーゼ
ジャン・シャンピオン

大好きな女優さんの一人にジャクリーン・ビセットがいます。そして、一番好きな外国映画の監督がフランソワ・トリュフォーです。その二人が組んだ作品がこの映画です。
ジャクリーン・ビセットという女優さんは作品に恵まれず、代表作と言える作品はこれといってないように思うのですが、とにかく凛として美しい女優さんです。
フランソワ・トリュフォーは名作揃いですが、今回はこの作品にしました。映画作りの現場が舞台になる映画なのですが、作品中に映画への愛情が溢れています。トリュフォー自身も映画監督の役で出演しています。ほとんど主演といって良いと思います。S・スピルバーグもトリュフォーを尊敬していて、『未知との遭遇』にも出演して貰っています。
因みに<アメリカの夜>とは、晴れた昼間にブルーのフィルターを付けて疑似の<夜のシーン>を撮る撮影方法です。古い西部劇などの夜のシーンはほとんどこの手法で撮影されています。西部劇はアメリカ映画です。だから<アメリカの夜>なのです。

『最も危険な遊戯』

製作/1978年
監督/村川透
脚本/永原秀一
出演/
松田優作
田坂圭子
荒木一郎
内田朝雄

松田優作主演のアクション映画。
僕が一番憧れた男優さんが、故・松田優作さんでした。
おそらく初めて優作さんが主演した映画だと思います。制作費も3000万円くらいで撮ったプログラム・ピクチャーです。本当に制作費が掛かってないのが画面からも判るのですが、優作さんを筆頭にキャスト・スタッフ達の<熱>がスクリーンの中にみなぎっています。
照明が足りないせいか、真っ暗な画面に優作さんの息づかいの音だけ……みたいなカットもあるのですが、一瞬暴発する拳銃の紅い火だけの照明でシルエットが浮かぶ……なんて、観客の想像をどんどん掻き立ててくれます。これこそ映画の醍醐味です。セリフもおそらくはアフレコなので、口の動きと合っていなかったりするのですが、優作さんの軽妙なアドリブで楽しませてくれます。因みに佐々部組常連の照明技師・渡辺三雄さんは、この映画が照明技師のデビュー作です。そして『出口のない海』が技師として70本目の記念作品です。 【加筆】
渡辺三雄さんは2010年の晩秋、亡くなりました。
僕の作品では『日輪の遺産』が最後になりました。

『太陽がいっぱい』

製作/1960年
監督/ルネ・クレマン
原作/パトリシア・ハイスミス
脚本/ルネ・クレマン、
ポール・ジェゴフ
出演/
アラン・ドロン
マリー・ラフォレ
モーリス・ロネ
エルヴィール・ポペスコ

中学時代、雑誌「スクリーン」を読み始めた頃、日本ではアラン・ドロンが大人気でした。僕もすっかり嵌ってしまい、公開作品はすべて観ました。高校生の頃には、似合いもしないのにトレンチ・コートを真似て着ていました。当時流行っていたダーバンの真似です。
アラン・ドロンの映画だけを収録したサウンドトラック盤(LP2枚組)は今でも大切な宝物です。そんなアラン・ドロン作品のベストが『太陽がいっぱい』です。ギラギラした野心が<完全犯罪>に向かう……アラン・ドロンは犯罪者の役なのですが、その危うい魅力にドキドキしました。もう20回以上観た作品ですが、いまでもDVDで年に一度は見直す作品です。
ヨット上でのサスペンス・シーン、ただ市場をアラン・ドロンが散歩するだけのシーン……アンリ・ドカエの手持ちカメラも素晴らしいです。ニーノ・ロータの音楽も最高です。数年前、『リプリー』というタイトルでジュード・ロウ、グィネス・パルトロウ主演でリメイクされましたが、本作には遠く及ばないものでした。

『潮騒』

製作/1975年
監督/西河克己
原作/三島由紀夫
脚本/須崎勝弥
出演/
山口百恵
三浦友和
初井言栄
亀田秀紀

中・高時代のもう一人の僕のスターは山口百恵さんです。まだビデオソフトが18,000円くらいしてた頃に『伊豆の踊子』から引退作品の『古都』まで十四本すべてを買い揃えました。しかもベータです……今は観ることも出来ないのですが書棚にはきれいに並んでいます(トホホ)。モモ・トモ映画で一番好きな作品が『潮騒』です。三島由紀夫のシンプルな小説が原作で、映画自体もいたってシンプルです。
『チルソクの夏』はこの映画へのオマージュでもあります。因にヒロイン・郁子(水谷妃里)が新聞配達の途中に神社で手を合わせるシーンは、『潮騒』のなかで初江(山口百恵)が新治(三浦友和)のために祈るシーンのパクりです。
僕は助監督のデビューがこの映画の西河克己監督作品でした。撮影の合間、ミーハーにも山口百恵さんのことばかり質問したことを思い出します。『出口のない海』では三浦友和さんとご一緒することも出来ました。

『新幹線大爆破』

製作/1975年
監督/佐藤純彌
脚本/小野竜之助、佐藤純彌
出演/
高倉健
山本圭
織田あきら
郷英治

高倉健さん主演のサスペンス映画です。大ヒットしたキアヌ・リーブス主演の『スピード』はこの作品のパクりです。
高倉健さんが犯罪者を演じていますが、観ているうちにどんどんこの犯罪者を応援したくなります。この時点でほぼ作品は成功です。新幹線のスピードが80キロ以下になると爆発する爆弾を仕掛けた犯人側と警察側の攻防という一見荒唐無稽な話だけで2時間半を見せ切ってしまいます。こんな娯楽映画が日本にもあったんだと、高校3年の時に感動しました。残念ながら日本ではヒットしませんでしたが、フランスでは大ヒットしました。
因みに僕の映画学校での最初の実習作品は『自転車大パニック!』(1982)。自転車のペダルを漕ぐのを止めると爆発する爆弾を仕掛けられた新聞配達の青年を主人公にした作品です。『スピード』のヤン・デ・ポン監督よりもずっと早くパクッてたわけです。

『殺人の追憶』

製作/2003年
監督/ポン・ジュノ
脚本/ポン・ジュノ、
シム・ソンボ
出演/
ソン・ガンホ
キム・サンギョン
パク・ヘイル
キム・レハ

ここ数年、日本ではヨン様を中心に韓流ブームです。たくさん韓国映画が公開されました。飛び抜けて僕が好きな作品が『殺人の追憶』です。もっとも、流行の韓流映画と一緒に括るには違う作品かも知れません。
事件を追う刑事たちのキャラクター分けが素晴らしい。ツルンとした男前は一人も登場しません。田舎の刑事と都会の刑事……。両者に人間臭さがプンプンしています。
また容疑者たちのキャラクターも特筆です。とにかく小さなキャラクターに至るまで丁寧に作り込まれていて、それを演じる俳優さん達一人一人の力量に圧倒されます。
特に奇抜な映像を撮っているわけでもなく、オーソドックスな絵作りです。でも、そのオーソドックスさこそが力強いということをあらためて感じさせてくれます。『半落ち』と同日公開された『ミスティック・リバー』を観た時は、勝った!っと思ったのですが、『殺人の追憶』にはガツンと頭を打たれたように思いました。アメリカ映画『夜の大捜査線』と観比べるのも面白いでしょう。

『祭りの準備』

製作/1975年
監督/黒木和雄
原作/中島丈博
脚本/中島丈博
出演/
江藤潤
馬渕晴子
ハナ肇
浜村純

映画のシナリオライターを目指して土佐の田舎町を飛び出し、東京に向かう若者を描いた低予算の青春映画です。自分が映画を目指して東京に来て、初めて観た映画がこの『祭りの準備』でした。シナリオも覚えるくらいに読みました。
土佐弁と下関弁が似ていて、主人公(江藤潤さん演じる盾男)と自分がダブって仕方ありませんでした。大学の四年間に映画館で40回以上観た映画です。結局、大学の卒業論文もこの映画について書きました。出来の悪い学生で、単位もギリギリ、<可>ばかりの成績でしたが、この卒業論文だけは<優>が貰えました。
監督は『父と暮せば』の黒木和雄監督です。一昨年、いろんな映画の授賞式でお会いする機会があり、紹介されてご挨拶したとき、何だか自分の中で感慨深いものがありました。その黒木和雄監督は今月初旬に逝去されました。ご冥福をお祈り致します。

『ウエスト・サイド物語』

製作/1961年
監督/ロバート・ワイズ、
ジェローム・ロビンス
原作/アーサー・ローレンツ
脚本/アーネスト・リーマン
出演/
ナタリー・ウッド
リチャード・ベイマー
ラス・タンブリン
リタ・モレノ

これは僕が映画の道に進もうと決めた原点のような映画です。下関文化劇場で一ヶ月に13回観ました。初めて買ったサントラ盤もこの映画のサントラです。擦り切れるくらい聞いたのですが、今でも手放せません。最近、『シカゴ』『オペラ座の怪人』今上映中の『プロデューサーズ』など、たくさんのミュージカル映画がありますが、少なくても僕の中では『ウエスト・サイド物語』を超えるミュージカル映画とは出会っていません。昨年の『パッチギ!』が<和製ウエスト・サイド物語>と謳っていましたが、僕の作品『チルソクの夏』こそがこの作品へのオマージュで作った映画です。
あの山口百恵さんもこの作品の大ファンで、ベルナルド役でアカデミー助演男優賞を受賞したジョージ・チャキリスが好きな俳優さんだとアイドル時代に言っていました(笑)。

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